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『飴宿り(あまやどり)』作者:Evo-S

〔登場人物〕

・宮本寛太(みやもとかんた):♂。駄菓子屋“甘太郎(かんたろう)”における、後の5代目店長。現在高校2年生。

・宮本武(みやもとたけし):♂。寛太の父。

・宮本絹代(みやもときぬよ):♀。寛太の母であり、4代目店長。

・岡野萌美(おかのもえみ):♀。寛太と同級生で後の彼の妻。

・落合妙(おちあいたえ):♀。岡野の友人。

・女の子①:♀。8歳頃。

・女の子②:♀。8歳頃。

・おじさん:♂。40歳代半ば。

・ナレーター(N表記):♂。

〔注意事項〕

・米印はト書きです。読まないでください。

・カッコ内は読んでください。

・この作品は男性3人女性3人の、合計6人による声劇です。

・“女の子①”と“妙”、“女の子②”と“絹代”、“おじさん”と“武”はそれぞれで兼任をお願いします。

・このお話はフィクションです。

〔STORY〕

N:皆さんは突然の降雨で混乱し、近くの店で雨宿りをしたという経験がおありであろうか?1人で嘆く者、友達とワイワイたのしむ者、冷静に状況把握をする者、色々だ。

これは、そんな1シーンがきっかけで始まった恋物語である。

(※雨が降っています)

寛太:ウソだろ?こんな時に雨降るんじゃねェよ…。雨降る予想なんて無かったじゃん。

雨宿り雨宿り…。

…あ、母さんのところだ!少しだけ雨宿りさせてもらおうっと。

(課題をやる時間が少しは減るけど、致し方なしってことで。)

萌美:こんな時に雨なんて降らないでよ。家までもう少しだって言うのに…。

この強さじゃ帰れそうにないじゃん…。

困ったなぁ…。

N:とある日の平日、夕方5時頃。2人の高校生が雨宿り場所を探していた。

すぐに見つけたのは寛太。丁度ルート内に一家で経営している駄菓子屋があるのだ。

寛太:母さ~ん!すこし雨宿りさせてもらうよ!

絹代:寛太、おかえり。

あんた、傘持ってかなかったの?

寛太:だって降らないって予報だったじゃん。降水確率も終日0%だったわけだし。

絹代:この時期は予報になくても通り雨が起こるものなの。折り畳み傘でいいから家に帰ったら忍ばせておきなさい。

寛太:は~い。

萌美:(…あ!駄菓子屋さんだ!少し避難させてもらおうっと。)

お、お邪魔します…。

絹代:あら、いらっしゃい。

萌美:雨宿りのため、少しの間お邪魔します。

あ、何かここで買っていきますので。

寛太:え?も、萌美ッ?!

萌美:え?寛太くん?!

絹代:あら?2人ともお知り合いなのかしら?

寛太:母さん。同学年だってば!昨年は同じクラスだったし。

もう忘れたの??

絹代:あら?そうだったかしら?

店のことで手が回らないの。

萌美:改めて、初めまして。“岡野萌美”と申します、いつも寛太くんがお世話になっております。

絹代:あらあら♡

(※はたらく細胞のマクロファージさんのイメージ)

うちの寛太がいつも迷惑かけてごめんなさいね。

これ、感謝の気持ちってわけじゃないけどあげるわ。

萌美:こ、これって…。

フルーツ飴の大袋。こんなにも大きなのを頂いてしまって…。

絹代:いいのよ、気にしないで。

私にできることなんてこれくらいしかないから。

寛太:母さん。

絹代:“お前は黙ってな!!(怒)”

はい、傘。少し萌美さんとお話するから。

寛太:…はい。

N:しょぼんとする寛太。途方にくれながらも傘を差して家路に着く。

絹代:ごめんなさいね。こんな馬鹿息子で。

学業の方は良いらしいんですけどね。

人付き合いがどうも苦手のようで。

萌美:大丈夫です。

何でしたら、彼にはいつも助られてばかりなので。

“素敵な副学級委員”ですね♪

絹代:アハハ。

萌美:うふふ♡

N:寛太は家に到着。父の武が夕飯の用意をしていた。

寛太:ただいま…。

(※元気がない感じで)

武:おう、おかえり。

どうした?何だか元気が無いみたいだな。

寛太:何で本人がいる目の前で俺を侮辱するかなぁ?

メンタルが抉(えぐ)られる側の気持ち、知らないはずでしょ。

武:ん?何があったんだ??

取りあえず片づけて来い。

N:寛太、重い荷物と身体を引きずりながら自分の部屋へ。

寛太:(ざけんじゃねぇよ、マジで)

N:手洗いうがいを済ませ、父と食事をとる。

寛太:あのさぁ。

さっきの件。

武:おう。

寛太:丁度さ、雨宿りで母さんの店に寄ったんだよ。

そうしたらさ、同級生の萌美って女子がやってきて母さんと話をしていたんだよ。

武:それで?

寛太:母さんがさ、

“うちの馬鹿息子が大変お世話になっております。”“学業以外全くできない屑(くず)なので。”

(※オバサンになりきって)

とか言い出したんだよ。張本人が目の前にいるのに、だよ?

武:それはイカンなぁ。

言うとしても、大抵は本人がいない状況だな。

そりゃ凹むよな?寛太。お前は悪くはない。

寛太:何なら、聞く?

武:え?あるの??

寛太:ほい。

武:おっし、キャッチ。

N:寛太のスマホを開く武。時間的にそれらしき音声ファイルを発見。

開いてみると、やはりお話の通りだった。一部誇張はあるが。

武:それにしても、よく録(と)れたなぁ。

寛太:ケータイの画面を消そうと思ったらカメラのスイッチが入ったんだよ。それで、動画状態で録画スタートのボタンをポケットの衝撃で入れていたみたい。

武:偶然、ってわけか。

…よし、父さんに任せろ!!

N:寛太が寝た頃、武は絹代と話をしていた。

武:お前、寛太のいる目の前で悪口言ったらしいな。冗談だろうけど、本人の目の前は流石に馬鹿だろ?

絹代:それくらい別にどうだっていいじゃない。

“私には関係ないわけだし”

武:よくそんなことが言えるもんだ、言い出しっぺのくせによ。

俺たち、寛太の親なんだぞ?本人がいる目の前で他人に馬鹿野郎とか罵るのは親として失格だぞ!まさか、自覚してないとか言うんじゃないだろうなぁ!

絹代:そんなわけないじゃない。

一種の愛情表現、ってやつよ。

武:“愛情”表現?!

冗談で済む話とは思わないけどなぁ。

N:翌日、学校にて。

萌美:あ、寛太くん。おはよう。

寛太:おはよう。昨日は色々とごめんよ…。

これ、あげる。

萌美:全然。気にしてないから。

あと、これって…。

寛太:今日から発売されるミルクキャンディー。

何故か俺んところでも売るんだとさ。個数限定らしいけど。

萌美:そ、そんなぁ。

ありがとう、後で美味しくいただくね♡

N:そして、昼休み時。萌美の教室にて。

妙:もえみん。その飴、どうしたの?

萌美:あ、これ?知り合いが私にくれたの。

妙:しかもそれ、今日発売の新商品じゃん!!

いいなぁ。

萌美:うふふ♡いいいでしょ?

ぱくっ。

(美味しい!)

N:時を同じくして、甘太郎。この日は休日だが清掃をするために出勤。本日休みでもある武も手伝いをする。

武:なあ、お前。

絹代:何?

武:最近、売り上げがよろしくないらしいな。

近所から噂で聞いているぞ。

絹代:そりゃあ…。

今の若い人に駄菓子だなんて。

武:ん!

(※ベシっ!)

N:武、絹代にビンタ。

絹代:あなた!!!

武:お前。この店、先祖代々から受け継いでいるんだろ?こんなことで店じまいだなんて俺は許さん。

もしやるなら、寛太に任せてみればいいんじゃないのか?始めの2、3ヶ月はお金のことをマスターするために付き添わないといけないんだろうけどさ。

絹代:まだ彼は大学に行きたいと思っているのよ?

武:なら、行かせてやればいいじゃないか。

卒業後に継がせればいい。

絹代:あなたは本職どうするの?

武:続けるだけさ。今まで通り。

代わりに、俺から問題点とその改善方法を挙げておく。それを1つずつ潰したら売り上げも回復するんじゃないのか?

N:その夜。

武:はい、改善点リスト。

俺がどうこう突っ込むものじゃないんだろうけど、これだけ見つかった。

絹代:ちょ、こんなにもあるの?!

武:あぁ、そうだ。事細かにしたかったから、ざっと30。わかりやすいように、重要度別で分けておいたから。何から取りくみゃ良いのかは一目瞭然だな。

寛太:あ、この新商品うめぇや。

(※勉強中)

N:それから少し経って年末前のある日の学校。

寛太:明日は模試かぁ…。

妙:か~んちゃん♪

寛太:あ、妙さん。

妙:よ!

何か、放課後にもえみんからキミに話があるんだってさ。

寛太:もえみん?

妙:萌美のこと。

前、飴あげたんでしょ?かなり気に入っていたみたいよ。

寛太:喜んでいたのならよかった。

妙:それの御返事とかじゃないかしら?

寛太:でも、それなら放課後に呼ばなくても。

妙:何か裏がありそうね。

寛太:無きゃ困る。裏無しにこんな真似をしたら流石に泣く。

妙:そりゃそうよねぇ。

N:その日の放課後。待ち合わせ場所にて。

寛太:確か、この辺りに来てとか言っていたような…。

萌美:“遅かったよ、寛太くん。私を待たせるだなんて。”

寛太:www

“俺の方が先だったけどなw”

萌美:うふふ♡

寛太:“僕と付き合ってください!!”

萌美:(彼、勘が鋭いわね。

好きよ♡)

“私こそ、よろしくお願いします♡”

寛太:(だろうと思ったぜ。異性に呼ばれてこの状況なら、大抵のパターンならこう来るはずだからな。)

今朝、妙さんから聞きましたよ?前あげたミルクキャンディー、気に入ってくださったみたいですね。

萌美:あの味、私にはドンピシャだったの。

それに、あの店のおばさんと結構気が合ってね。

寛太:なるほどね。

(わからん。女性同士の気の合う条件がマジでわからん。)

N:スイーツトークで盛り上がる2人。

高校卒業後、2人は別々の大学に通うことになるも恋愛は続いた。そうして大学を卒業してから3年後、2人は無事にゴールイン。

甘太郎は武の言った通り、寛太が第5代店長として活動をしている。

女の子①:お願いします。

寛太:はい。えっと、これだけ合わせて…。

はい、200円丁度です。

女の子①:ありがとうございます。

女の子②:早くしてよ。先に公園に行っちゃうからね。

女の子①:あとちょっと待って。すぐに行くから。

女の子②:早くしてよね。

寛太:アハハ。

萌美:女の子たち、元気そうですね。

寛太:そうですね。

あんな元気、今の私にはありませんから。

萌美:うふふ♡

おじさん:あんちゃん。これ、よろしく。

寛太:はい。

お会計、555円です。

おじさん:仮面ライダーかな?

寛太:電車に乗って登場はしませんよ。

おじさん・寛太:wwwwww

おじさん:あんちゃん、良く知っているねぇ。

寛太:はい。全話は見ていませんが、ちょくちょく見ていたので。

ジャストファイズも、カラオケで歌っていますし。

おじさん:なかなかやるじゃないか。

それじゃあ、頑張れよ。

寛太:はい!ありがとうございます!!

N:一粒の“あめ”から始まる恋物語、これにておしまい。

~完~



キーワード:恋愛・9人・男4・女

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