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『笑顔のままで』作者:のどか

登場人物

・夏乃(女)28歳OL

・不思議な男の子(女の子でも可。)小学校高学年くらいの見た目(女の子に変えるなら一人称は「あたし」で)

・元彼

・上司(元彼と兼任)

・秀平

・サークル参加者A(男、秀平役が兼任。)

・サークル幹事(男の子役が兼任)


元彼:そういうことだからさ、ごめん、夏乃。俺たちもう別れよ。


夏乃:うん...わかった。今までありがとう。


夏乃:はぁ…私このままどうなっちゃうんだろ…

唐突ですが私、たった今、大学時代から8年付き合った彼氏に振られちゃいました。

「他に好きな人が出来た」...だってさ。つまり女としての魅力で負けたってわけね、私は。もういいや、知らない誰かに嫉妬したってしょうがない。でも…


不幸は重なるもので、失恋のショックから立ち直れないまま出勤したら、細かいミスは連発するわ、会議にも集中出来ないわで、上司にこっぴどく叱られちゃった。


上司:資料は作れない!会議も上の空!お前入社何年目だ!?この資料はやり直せ!全く…ちゃんと仕事こなせないなら、やめた方がいいんじゃないのか?

夏:はい...失礼します...。


もう、何にも上手くいかないな。

…生きてるの疲れちゃった。


うちのオフィスビルは多くの企業が合同で入居している建物だから、屋上に出れさえすればなんとか…

あ、遺書とか用意してないな…いいや、めんどくさいし別にいらないか。


…結構高いな、ちょっと怖いかも。

って、今から死のうとしてる人間が何考えてんのよ全く…(深呼吸)よし。

意を決して1歩空中に踏み出そうとしたその時...


男の子:お姉ちゃん、何してるの?


夏:え!?おおっと…っと。(←最後の「っと」で助かって下さい)

屋上に1人だと思っていたのに突然子供の声で話しかけられ、私はバランスを崩してしまった。なんとか持ち直せたけど。

君、誰?


男:ここで何してたの?


夏:いやその、ええっと…


男:こんなとこじゃなんだしさ、1階のカフェで話そうよ、僕キャラメルマキアート飲みたい!


夏:質問に答えてくれる?まあいいや。飲んだら帰ってよね。

なーんか変なのに捕まっちゃった。もうさっさと飛び降りさせてよ…


男:ん〜美味しい!お姉ちゃんありがとう!


私を引き止めた少年は私の目の前で無邪気にキャラマキを飲んでいる。

夏:ちゃっかりグランデ頼んでるし、遠慮ってものを知らないのかしら…飲んだら帰ってよね!


男:なんであんなとこにいたの?


夏:は?そんなのなんだっていいじゃない。それに、君も大概でしょ。ていうか、あなた小学生?早く帰らないとママに怒られるわよ。


男:…死のうとしてたんだね。


夏:!?…あんたには関係ないでしょ。


男:色々辛かったんだね。恋人に振られ、仕事も行き詰まって。


夏:あんたさっきから何言って…なんで知ってるの?


男:お姉ちゃんから出てるオーラが教えてくれてる。今、ものすごい負のオーラが出てるよ?


夏:は、はぁ。


男:この危機を脱するにはね…


夏:いや、私脱したいなんて一言も


男:いいからいいから。


夏:…はいはい。反論するの疲れた。ちょっとならお遊びに付き合ってあげる。


男:お姉ちゃんさ、まずは新しい彼氏探そ!ね!


夏:は?いきなり何言い出すのよ。


男:大丈夫、お姉ちゃん可愛いからすぐ見つかるよ。


夏:あのね…君は分からないだろうけど、大人は顔が整ってるだけじゃ彼氏できないのよ?


男:大丈夫だって!


夏:でも…私もうアラサーよ?どんなに頑張っても若い子には勝てないだろうし、そもそも8年ぶりにフリーに戻っちゃったから、どうやって男の人と仲良くなったらいいか忘れちゃったわよ。


男:大丈夫、平気だよ。


夏:どこがよ…


男:彼氏出来たら教えてよね!


夏:出来ないし、教えないっての。


男:大丈夫大丈夫!さてと、キャラマキありがとう!じゃあね〜


夏:はあ、やっと居なくなった。今からでもビルの屋上に出れるかな…


(LINE電話通知もしくはケータイ着信音)

夏:え?秀平くん?(ピッ)はい、もしもし。


秀:もしもし、夏乃ちゃん?久しぶり〜同窓会以来?


夏:そうだね、久しぶり、それでどうしたの?


秀:東京に出張。そいえば夏乃ちゃん上京してたんだっけって思い出して、電話しちゃった笑

俺、向こう1週間くらい東京にいるからさ、どっかでご飯行かない?東京の美味しい店教えてよ〜


夏:あ、そうなんだ…うん、わかった。明後日とかどう?


秀:OKOK!空けとくよ〜じゃあ、楽しみにしてる!またね!


夏:うん、じゃあね。(ピッ)全く、次から次へと…


男:よかったじゃん、男の人から食事のお誘い!


夏:うわぁ!あんたまだいたの!?


男:帰ろうとしたら着信音聞こえてさ、そこの電柱の影から全部聞いてたの笑


夏:はぁ…さっさと帰ってよ。


男:でもお姉ちゃん、ちょっとオーラの色が明るくなった。


夏:は?


男:とりあえず明後日の食事、楽しんできなよ。


夏:う、うん...

まあ、約束も出来ちゃったし、死ぬのはしばらくお預けかな


2日後

上司:なんか今日服装張り切ってない?あ、もしかしてデート?


夏:いえそんなんじゃ...セクハラですよ?


上司:あはは、ごめんごめん!じゃあさっき振った仕事、頼んだよ。


夏:はい。...でも、男の人と2人でご飯食べに行くって...デートってことかな?


居酒屋にて(数秒居酒屋がやがやBGM)


秀平:で?最近どーよ?


夏:同窓会からまだ半年くらいだよ?そんなビックニュースなんてないよ。秀平くんは?


秀:あー実はねー、彼女と別れたんだ。


夏:え?それはそれは...てか彼女いたのね。


秀:そうそう、3年くらい続いたかなー。俺にしては結構続いた方だと思わない?


夏:そうだね、高校時代とか取っかえ引っ変えで、多分彼女途切れてなかったもんね。


秀:ちょ、もうちょいマシな言い方あるでしょ、超モテるとか!笑


夏:はいはい。


秀:でさ、俺らもそろそろアラサーじゃん?だから結婚とか考え始めてたんだけど、彼女、結婚はまだ考えてない、まだ遊びたいとか言ってどっか行っちゃったの。


夏:うわ、そんなことが。彼女いくつだったの?


秀:5個下。


夏:は!?ちょっ、5個下って...23!?なんでまたそんな若い子と...


秀:会社近くのカフェでバイトしてた子で、可愛くてタイプだったから声掛けたんだ〜


夏:なんていう行動力...


秀:そんでその子と付き合ってたんだけど、向こうが大学卒業したころから連絡の回数も減ってきて、思い切って今後どうするか聞いたら別れたい、だって。まあそんな訳でフリーなのよ。ねぇ、夏乃ちゃんの周りに良さげなフリーの子いない?紹介してよ〜


夏:居ませんって。居てもこんな尻軽男には紹介しないし。


秀:なにそれひどい!

(がやがやBGM)


秀:は〜美味しかった!お酒も種類あったし、いいお店だったね!


夏:そう?ならよかった。あそこ選んで正解だったね。


秀:...夏乃ちゃんすごいな、すっかり都会の女って感じ。


夏:え?なにそれ?


秀:なんか、振る舞い?って言うのかな、全体的にクールな感じ!


夏:そう?


秀:そうだよー!もっと自信持ちなよ?


夏:自信、ねぇ。


秀:あ、じゃあ俺こっちだから、じゃあね!


夏:ああ、うん。じゃあまた。


夏:自信持てって言ったって...8年続いた彼氏と別れたばっかりの私の何がわかるってのよ。


男:秀平さんとの飲み会楽しかった?


夏:うわ、また!なんであんた...てか小学生がこんな時間に出歩いてていいわけ?


男:結構盛り上がってたみたいじゃん。それに、この前男の人と仲良くなる方法忘れちゃったとか言ってたけど、普通に仲良さそうに見えたけどなぁ?


夏:高校の同級生なんだから、それなりに仲良くて当たり前でしょ。


男:秀平さん彼氏にいいんじゃない?


夏:は!?ないない、誰があんなチャラ男...それに、あの人は出張で東京に来てて、来週には地元に戻るの。私遠距離は絶対無理だから。


男:えぇ〜?そっかぁ、もう仲良い人ならハードル低いと思ったんだけどなぁ。じゃあ秀平さんを見習って、いいなと思った人に声かけてみようよ!幸い多少のコミュ力はあるみたいだし!


夏:私にあんな尻軽に成り下がれって言うの?却下。


男:じゃあ彼氏出来ないじゃん!


夏:別に出来なくていいよ。


男:僕がやだ。


夏:あんたには関係無いでしょうが。


男:む〜。あ、じゃあさ、何か習い事始めてみなよ。没頭出来る趣味があれば、仕事でやな事あっても忘れられるし!


夏:なるほど、習い事ね、それいいかも。


1週間後


上司:...うん、この資料よく出来てるし、ミスもない。


夏:ありがとうございます。


上司:今振ってる他の仕事、ちょっと期限に余裕あるよね?定時よりちょっと早いけど、今日はもう上がってもいいよ。


夏:そうですね、そうします。では、失礼します。


男:今日ランニングサークルの日だね。


夏:ええ。走るのって楽しいわね、前より寝付きが良くなったおかげで仕事も捗るからいいことずくめよ。最近はサークルの日以外でも仕事終わりにちょっと運動してるし。


男:でしょ?習い事始める提案成功だったね


夏:そうね、始める時にあんたが、やれ男女比は半々がいいだの運動系にしろだの色々条件出して、いくつか候補まで持ってきたのは正直鬱陶しかったけど、今のサークルに入って正解だったかも。


男:うっとうしいとかやめてよ笑

今のサークルが当たりだったんだし、許して?笑


夏:全く...まあいいか、ありがとね。


男:うん!ふふ、お姉ちゃんやっぱり笑ってる方がかわいい!


夏:何?褒めても何も出ないよ?


男:えー?まあいいや、サークル楽しんできてね〜


夏:うん、そうする。あ、前からずっと気になってたんだけど、君って何者?名前も聞いてな...あれ?



夏:お疲れ様でーす。


参加者A:お疲れ様です!今日早いですね?


夏:はい、今日仕事ちょっと早く上がれたので。


A:そうなんですね。ちなみにどんなお仕事を?


夏:西区でOLをしてるんです。


A:そうなんですか?僕も西区で働いてるんですよ!意外と近くなんですね笑


夏:ほんとですね、すごい偶然笑


幹事:はーい皆さん、そろそろ始めますよ〜準備運動は済んでますかー?今日も先週と同じコースを走っていきまーす!


A:じゃあ行きましょうか。


夏:はい!


幹事:はい、今日はここまで!お疲れ様でした!


A:お疲れ様です。


夏:あ、お疲れ様です。結局走りながらずっと喋ってましたね笑


A:ほんとですね笑

あ、そうだ、連絡先交換しません?今度ゆっくりご飯でも食べながらお話出来たらなって。


夏:はい、いいですよ。ご飯も是非行きましょう。


数ヶ月後


A:あの、夏乃さん。


夏:はい、どうかしました?


A:僕、夏乃さんと一緒に過ごしててすごく楽しいです。僕達そろそろ正式にお付き合いしませんか?


夏:!!はい、よろしくお願いします!


ちゃんと彼氏出来たよってあの子に報告したいんだけど、最近めっきり私の前に現れないのよね...今までは呼んでもないのにひょこっと私の前に出てきてたのに。

...でもあなたのおかげで、すっかり立ち直れたよ。ありがとう。


fin



キーワード:3人・男2・女1・日常・その他・のどか


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