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『家族のかたち』 作者 :SHOWtaRWA

【登場人物】

・小林優太 (こばやしゆうた) ・・・33歳の会社員で大輝の養父 優しいが時折切ない表情を見せる

・小林大輝(こばやしひろき) ・・・18歳で春から大学生、交通事故で両親を亡くし優太に育てられる 明るく気配り上手で忙しい優太の代わりに家事もこなす


【STORY】

優太N|俺のあの時の選択は合っていたのだろうか... (数秒開ける)


優太|ただいまー...お、この匂いは今日の晩御飯は唐揚げか


大輝|おかえり、父さん。ストップ!リビングに来る前にまずは?


優太|ごめんごめん、手洗いうがいな笑... また2人で旅行とか行けるようになったらいいね


大輝|そうだね〜、温泉とか俺が20歳になったら飲み屋街とかね!


優太|おっさんか笑


大輝|うるさいな、いいだろ...ていうかよく晩御飯唐揚げだってわかったね笑、飲み物どうする?ビール?ハイボール?レモンサワー?


優太|大輝の作る唐揚げは鉄板だからね、もう匂いで分かるよ、いつも美味しいご飯ありがとうね...それでさ、今日は真面目な話があるからお酒は飲まないでおくよ


大輝|(真面目な話?なんだろ?)


大輝|オッケー、じゃあご飯よそうね


優太|うん、ありがと


大輝|カウンターの物、食卓までお願い


優太|オッケー、こんな素敵な息子がいて俺は幸せ者だな


大輝|何言ってんの笑ほら!ご飯食べるよ!


優太|いただきます...うん、美味しい


大輝|いただきます!...うん、美味しい!さすが俺!


優太|ほんとだな、さすが大輝だ


大輝|え、いやいや笑そこはなんか突っ込んでくれよ笑そんな素直に返されると照れるわw


優太|ははは、でもほんとにさすがだよ、うん、味噌汁も美味しい


大輝|え、なになにw怖くなってきたんだけど


優太|大輝は春から一人暮らしじゃん?だから今のうちに思ったことは伝えておこうと思って


大輝|なにそれw一生会えなくなるみたいな言い方はw というか父さんの一人暮らしすることが心配すぎるからちょこちょこ帰ってくるってw あっ!見たいテレビあるんだった!...見てもいい?


優太|いいよ、ちなみにその番組は?


大輝|突撃!バミューダトライアングルの謎に迫る!


優太|ほんとそういうの好きだねw


大輝|誰の影響だと思ってんの?




優太|ははは...俺ですね


大輝|ほんとだよ!今考えるとおかしいもん!寝る前の読み聞かせが月刊ムーって!


優太|あ!ほら!番組始まったよ!※被せ気味で


大輝|話逸らしたな... ※数秒開ける


優太|ふぅ、ご馳走様でした


大輝|お粗末さまでした


優太|洗い物と、後洗濯回しちゃうから今のうちにお風呂行ってきな、あー、それと入浴剤新しく買ってあるから


大輝|オッケー、じゃあお風呂いってきまーす


優太|いってらっしゃい


優太|はぁ、大輝ももう大学生か、この家も広くなるな※少し寂しそうに 話...するのは怖いけど話さなきゃだよな


大輝|ただいまー、ふぅ...いいお湯だった。父さん次お風呂どうぞって...なんか表情暗くない?


優太|おかえり、そんなことないよ、じゃあ俺もお風呂いってきます※誤魔化すように


大輝|行ってらっしゃい...今日の父さんなんかへんだな、ご飯の後に話したいことあるって言ってたけどなんだろ。もしかして父さんにもついにいい人が出来たとか?w


優太N|1人になるといつも考えてしまう、これで良かったのか...あの時した選択は間違いだったんじゃないのか。あれから16年か... あの時のことは忘れたくても忘れられない、ひどく耳障りなブレーキ音とその後の衝撃、血の匂いに赤ん坊の泣く声... 16年前、高校生だった俺は学校が早く終わったこともあり帰り道、珍しく降った雪に少しだけ心踊らせて雪を手に取り遊んでいた、その時だった...1台の車が猛スピードで電柱に衝突した。 中から子供の泣き声が聞こえた俺は咄嗟に車に駆け寄り後部座席から子供を助け出して運転席を見た。 ...運転席に座っている女の人はぐったりとしていて、その時はとても生きているようには見えなかった、程なくして到着した救急隊員に子供を預けた俺は震えが止まらなかった、俺が亡くなっていると思った女の人は呼吸器を付けられ担架で救急車に運び込まれていった、それを見た俺はしばらく放心状態になっていた...らしい...その後警察から事情聴取を受け帰宅した。 それから1年後、大学の入試が終わり家に帰る途中、ふと通りかかった児童養護施設を見た時に暗い表情の子供に目が向いた、あの事故の子供だと直ぐにわかった。家に帰ってからもあの子の寂しそうな顔が頭から離れない、俺があの時直ぐに救急車を呼んでいたら、そうしたらあの子も...親と一緒に居れたんじゃないか...考え始めると止まらなかった。胸を締め付けられるような感情が消えなくなった。考えているうちにあることが頭に浮かんだ、「俺があの子の親になろう」その時はなぜかそれが俺に出来ることだと思ったんだ。今思えば俺のエゴだ。そして親の反対を押し切って、大学へは行かずに働き始め、大輝を養子として迎えた。 そろそろ出るか...


優太|ただいまー、あぁ、さっぱりした


大輝|おかえり、ねぇねぇ帰ってきた時に言ってた話したいことってなに?いい人が出来たとか?笑


優太|少し長くなるからそこに座ってくれるか


大輝|うん、わかった


大輝|(あ、これ真面目なやつだ...なんだろ、少し怖いな...)


優太|大輝が高校卒業したら話そうと思ってたんだ、話っていうのは...


優太N|俺は今までの事を話した、あの事故の事、そしてどうして大輝を育てようと思ったのか、自分の気持ちを整理して分かりやすく話そうと思ったが気持ちが溢れて言葉が止まらなかった、自分でも訳の分からないことを話してる、そんな俺の話を大輝は顔を伏せ静かに聞いていた。


優太|俺は...大輝になんにもしてあげられなかった。大輝に相当我慢もさせてたし父親らしいとこも何一つない...そう思う度に、俺が親になって良かったのかなって、違う誰かが...俺よりもずっとずっと立派な人達が、裕福で、母親も父親もいて、大輝に何一つ不自由させないような人達の方が大輝も幸せだったんじゃないかって。大輝...こんな俺が親になって、ごめんな。


大輝|(父さんが泣くところを初めて見た。父さんがこんなこと思ってたなんて知らなかった)


大輝|はぁ...あのね、父さん。確かに最初はなんでこの人は俺の親になったんだろうって、小さいながらも疑問に思ったし、母さんが死んだって事も受け入れられずにいたっていうのもあって、父さんにはなかなか心を開けずにいた。それでも、それでもね...仕事で忙しいのに、不器用だけどご飯作ってくれて、その時のご飯が暖かった、美味しかった。休日になれば休みたいはずなのに毎週公園だったりプールだったり連れてってくれた。父さんには確かにお金も無かったし、たまになんで俺だけって不満に思うこともあった。でも父さんは...俺を愛してくれた、数え切れない程の愛をくれた。ねぇ、覚えてる?俺が5歳の時に保育園で熱出した時のこと、父さんあの時会社早上がりして急いで駆け付けてくれたよね。急ぎすぎて保育園のドア壊しちゃって保育園の先生達に落ち着けって怒られてたけどw ...そんな父さんだからこそ、俺は父さんの子供になれて幸せだったよ。ほかの誰かなんて嫌だし俺の父さんは父さんだけだ。だから父さんが後悔とか感じる必要は無いよ


優太|大輝...ありがとう......俺の息子になってくれて本当にありがとう...大輝の父親にしてもらえて良かった、俺にはこんなに素晴らしい自慢の息子がいるんだぞって言えるよ


大輝|そうだ父さん!実は俺からも報告があります!


優太|ん?


大輝|俺、大学行きながら割烹の厨房でバイトすることにした!さっきも話したけど、小さい頃に父さんが作ってくれた料理が忘れられなくてね...だから俺も食べてくれた人に幸せを与えられるような料理を作りたいって思ったんだ!そして俺が1人前になって作る料理の1番最初は...父さんに食べてもらいたい。


優太|っ...そういうことは相談してくれよ、大輝が決めたことなら俺は全力で応援する。大輝がプロになった時の料理、楽しみにしてる。


大輝N|血の繋がりだけが家族じゃない、血の繋がってない親子だけど、俺たち親子は最高です。 そんな俺たちの...「家族のかたち」


Fin.


【キーワード】感動・2人・男2・SHOWtaRWA

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