〔登場人物〕
・ナリタ(♂)…今回の主人公。名前はシンジ。
・タカネ(♀)…ナリタの彼女。
・コウスケ(♂)…ナリタの知人。
・ヒサノリ(♂)…ナリタの父。基本はナレーション。
・ソウコ(♀)…ナリタのクラスの担任。
・エイコ(♀)…ナリタの高校時代のガールフレンド。付き合ってはいない。
(※人名の後にN表記があれば、そこは語りのシーンです)
〔注意事項〕
・このお話はフィクションです。
・米印はト書きです。読まないでください。
・カッコ内は読んでください。
・この作品は男性3人と女性3人の、合計6人による声劇です。
・言い換えは可能ですが、話を壊さない程度にお願いします。
〔STORY〕
ナリタ:タカネ、愛してる…。
タカネ:うん♡私も♡
ナリタ(N):こんなラブラブができるようになったのもここ最近のこと。それまでは、比較的誰ともかかわりを持たず一人で過ごすことが多かった。知人やクラスメートと外出をすることもなく陰キャ街道まっしぐら。ひたすら勉強に追われるばかり。参考書とにらめっこの高校時代。テレビっ子。
見事な孤独生活である。
ソウコ:ナリタくん、いつも一人でいるけど寂しくなんかないの?何か悪いこととか企てているんじゃないでしょうね?
ナリタ(N):担任にまで不審に思われる始末。心配しておきながら何を口に出しているんだ。俺、何か悪いことでもしたか?
コウスケ:おい、ナリタ。
今度、一緒に映画にでも行こうぜ。
“武者滅の刃(むしゃめつのやいば)”の前売りチケットが余っていてさ。どう?
ナリタ:ありがとう。一緒に行こうか。
コウスケ:よし!決定!!
ナリタ(N):たまにはこうして誘ってもらえることもあるけど、中学時代ではこの一回きり。小学校時代?ずっと家だった。
“外は危ないから家に居ようね”
だってさ。高校時代もそう。
“大人に成ったら外に出ようね”
だってさ。
“もっとお金を稼げるようになってから外に出ようね”
だってさ。
大人に成れねぇじゃねぇかよ!!ふざけんな!!
一生どこにも行けねぇじゃねぇか!!
ソウコ:だから私は心配しているの。恨みや妬みから事件を起こすんじゃないのか、って。
貴方なら、本当にしでかしそうなんですもの。
ナリタ(N):誰かこのセンコウを黙らせてくれ。今すぐコイツを殺したいんだ。
お前がマッチポンプだって少しは意識してくれ。
ナリタ:そんなことはしませんよ。したら即退学ですし、進学だってできません。
ソウコ:素朴な疑問なんだけど、貴方は普段何しているの?
ナリタ:え?勉強くらいしかありませんが。
ソウコ:だけ?
ナリタ:あとは…、読書?
ソウコ:あるじゃない。どんな本なの?
ナリタ:これです。
ソウコ:どれどれ?
“日本大改革”
ナリタ:ネットでこの本が面白いということで読んでます。
ソウコ:そんな変な本は読まないで。
ナリタ(N):知るか!貴様らが洗脳されてるじゃねぇか。
ヒサノリ(N):彼は、一言で表現するなら“一匹狼”。我々がそのように育ててしまったのも要因としてあります。それでも孤軍奮闘しながらここまで来られたのは親として嬉しい限りです。
そんな彼は、第一志望の高校に無事入学。ひたすら勉強するばかりで、趣味らしき趣味はありませんでした。あっても音楽を聴く程度。そんな余裕もほぼほぼ無かったようですが。
ナリタ:もうあと数日でセンター試験かぁ。
早いよなぁ~、全く。
エイコ:でも、ナリタくんはいつも補修頑張っているんでしょ?
先生から聞いたよ?補修の前にいつもきれいに黒板を消してくれるからやりやすいって。
そんなキミなら受かるよ!
“私、信じてるから!”
ナリタ:アハハ。
ありがとうございます。何だか、照れますね…。
ヒサノリ(N):恋愛経験が皆無だった彼。彼女との出会いと付き合いは高校生活のクライマックスにはもってこいのシチュエーションであったと言えるでしょう
まさに、“青春(アオハル)”
ナリタ(N):こうして、無事に大学に進学。入試前に交換していただいた手紙が心の支えとなった。
しかし、今では赤の他人。久々に電話をしてみても
「アンタ誰?」でおしまい。
悲しいもんだぜ…。
ナリタ:…ん?電話だ。
はい、もしもし?
コウスケ:おう、久しぶり。
突然だけどさ、今度の金曜日に飯でもどうだ?
ナリタ:気持ちは嬉しいんだけど、無理だわ。
その日、入学前のオリエンテーションが一日中実施されるからさ、パスできないんだよ。
コウスケ:その後に来ればいいじゃん。
ナリタ:そういうじゃん?
終わりの時間が分かってないんだよ。目安として午後5時ってなってるけど、そっちに戻るころにはとっくに飯会始まってると思うぜ?
コウスケ:遅れてくればいいじゃん。
ナリタ:ついでに言うと、その日の前日に入学者事前学力測定、っていう試験があってそれにも出なきゃならないんだよ。
“流石に、休みたい。”
変更とかはできないんでしょ?
コウスケ:そうだね。こっちの方で確定させた。
ナリタ:他の奴には相談したのか?
コウスケ:“お前以外”には相談したよ。
そうして、こうなった。
ナリタ:“お前ら、殺してもいいか?”
(※電話を切る。イライラしている)
ナリタ(N):俺なんて、居て居ないようなもんだ。
“どうでもいいやつ”って証明ができたねwww
ヒサノリ(N):その時の電話、私も耳にしていました。丁度出かけており私が運転していました。かなりキレてましたね。気持ちも分からなくはないです。
ナリタ:親父ィ~。ざけんじゃねぇよ~。
ヒサノリ:仕方ないじゃないか。そっちが決めたことなんだろ?
ナリタ:なんでこうも俺のことガン無視で黙りこくるんだよ…。
冗談じゃねぇよ…、ったく。
ヒサノリ:悪意アリだと思っているのか?
ナリタ:Yes!
でなきゃこんなこと起こらねぇよ。
ヒサノリ:そりゃ嫌だよな。
少数派をガン無視する多数決ってさ。
ナリタ(N):親父はわかっていた。俺の気持ち、怒りの矛先。
迷走していたのだ。
ヒサノリ:成人をしても彼は大人に成れていなかった。馬鹿なことを考えていたのだ。
テレビのバラエティー番組でのドッキリを見ては
“もっとド派手にやれ”
“甘いなぁ”
と口にする。
品評会系の企画では、世界の名うてのコンクールでグランプリをとるレベルの発言をそのまま鵜呑みにして、
“この方が言うんだから、間違いなく不味い”
“この商品はダメだから一生買っちゃダメなんだ”
と思い込んでいる。
あくまで、一個人の感想ではあるのだが、バックが大きすぎるため、そのまま信じ込んでしまうようだ。
一時期、その商品の不買運動を仕掛けようとしたとかしなかったとか。
当然、絶賛する商品は
“これはあの人が絶賛したから間違いなく美味しい。絶対に買わないといけないんだ!”
となる。
クソゴミに操られるとこうなってしまうのだ。
ナリタ(N):大学三年生になる直前、親父にこんなことを話してみた。
ナリタ:俺さ、ちょっとコスプレが何なのか気になるんだよね。
ヒサノリ:ん?
急にどうした??
ナリタ:この辺りってさ、サブカルチャーが発展しているでしょ?
それを直接体験したくてさ。
大きいイベントがあるんだけど、定期券の区間内が最寄りでね。交通費もかからない。
ヒサノリ:ほう。
行ってみればいいじゃないか。
ナリタ:ありがとう。
ナリタ(N):そこで初めて、私はコスプレの世界に足を踏み入れた。
カメラマン、ということではあるがどのカメラマンさんもレイヤー様も初めての私に優しく接してもらえて感動した。
ありがたいことに、今でも撮影の方はしているし人気のアニメを知る場としても利用させていただいている。
ヒサノリ(N):それから数年後、彼はイベントで知った方と別日にプライべートな撮影を実施し、タカネという女性と出会うことになります。
それが、今のシンジの彼女です。
ナリタ:もしも~し?
タカネ:もしもし。
先日の撮影、ありがとうね。とても楽しかったよ。
ナリタ:俺も楽しかったよ。
…でも、あまりタカネのことを撮れなくて悔しいよ。
タカネ:仕方ないよ。
ナリタ:それでさ、今度一緒に撮影でもしない?
タカネ:え?
いいよ?
ナリタ:ありがとう。
ヒサノリ(N):そこから彼は彼女に告白。現在、お付き合いしている真っ只中です。
ソウコ(N):時を同じくして、彼の知人で会ったコウスケは大学の入学式直前になって合格を取り消しとなりました。
というのも、彼が開催した食事会を巡って大きなトラブルがありました。参加予定で考えていた当時のクラスのメンバー全員に話を聞いたと彼が口にしましたが、実際に参加してみると参加予定者30人中17人しか集まらなかったのです。この30人には担任であった先生は含まれていませんでしたが、会の途中で、彼の口から直々に
「俺の嫌な奴は最初から日程調査のアンケートなんてしてないよw良い奴らの意見だけを取り入れたのさ♪」と発言。
それを耳にした担任が大激怒。しかも、そのタイミングでナリタを含む“取り残された”メンバーから次々に怒りと心配のメッセージをラッシュで受信。酷いことに、一部のメンバーからは参加費のみ徴収し返金をしなかったとのこと。
当然ながら無事に済むわけもなく、参加していたメンバーに警察官がいたということもあって彼は逮捕。
ちなみに、ナリタ自身は徴収されていなかったため特に何もなかった。
エイコ(N):“大人に成りきれない大人達へ”
いつまでも子供でいるとどこかで大損します。最悪の場合、人生が終わります。家族ですらあなたを救っては頂けません。自分自身で何とか名誉挽回をする他はありません。いつまでも脛(すね)をかじり続けているのは周りからもみっともないと見られるだけです。
ヒサノリ(N):このお話を聞いている方々へ。
もしかすると、他人事(ひとごと)では済まされませんよ?改めて自分の言動を省みて(かえりみて)ください。
“今なら、まだ間に合います”
~完~
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