【登場人物】
・ヨハン ♂︎ 江戸時代にオランダからの貿易船に紛れ込んで日本に来た青年。 金髪に緑色の瞳を持つために鬼扱いをされていて山奥で暮らしている
・弥吉♂ 各地を旅して回る浪人。剣の腕が立ち 立ち寄った村で村人たちから鬼退治を依頼される セリフは少ない
【STORY】
ヨハンN|真っ暗な山の中に飛び交う怒号と無数の足音。父から聞いていた優しい日本人の姿はどこにもなくて、ただ...ただ恐怖と嫌悪に満ちた目を向けられ僕は追われていた。 追ってくる影の中、月に照らされキラリと光る物が見えた。
ヨハン|(あれは刀か、僕はここで殺されるのか......嫌だ、こんなところで死ぬ訳にはいかない!必ずオランダに、母の元に薬を届けるんだ!)
ヨハンN|僕は必死になって山の中を走り回ったが、木の根に躓いて転んでしまった。
弥吉|観念しろ ヨハン|(ここまでか...母さん、ごめん)
弥吉N|鬼...と呼ばれていたその者は諦めたようにゆっくりとこちらを向いた。木々の間から月明かりに浮かんだその者を見た時に不意に 「美しい...」
ヨハン|...は?
弥吉|...見たところ物の怪の類いでは無いな、その髪色、紅毛人か?
ヨハン|!...そうです!オランダから来たあなたと同じ人間です!
弥吉|オランダから、それなら平戸にいるはずだろ何故遠く離れた紀伊の山奥にいる
ヨハン|それはっ...!母が病に倒れて、その薬を探しに日本に来たんだ、でも薬がどこにもなくて...
弥吉|それでそんなボロボロになりながらここまで来たのか、名はなんという
ヨハン|は?
弥吉|お前の名だ
ヨハン|ヨハン...
弥吉|ヨハンか、少し言いづらいな...ヨタ、お前をこれからヨタと呼ぶことにした
ヨハン|待ってください...状況が飲み込めなくて、あなたは
弥吉|弥吉だ
ヨハン|...あなたは
弥吉|弥吉だ
ヨハン|...弥吉さんは僕を殺すように村人からお願いされて来たんですよね?それがなんでいきなり...
弥吉|俺が依頼されたのは鬼を退治してくれ...お前は鬼ではないだろ、だからこの依頼は無効だ。そもそも鬼が居ないからな。
ヨハン|はぁ、それと呼び方を変えるのにどんな意味が?
弥吉|ヨタ...お前に惚れた、月明かりに照らされたお前があまりにも美しかった。
ヨハン|っ...!急になんですか!
弥吉|話している時間は...無さそうだ
ヨハンN|弥吉さんがそう言うと村人たちが集まってきた
弥吉|見ろ、こいつは鬼ではなく紅毛人という異国から来た俺たちと同じ人間だ
村人|そんがなこと言っても見てくれが全然ちげぇじゃねか!
弥吉|聞く耳は、持たないか...仕方ない
ヨハンN|弥吉さんは目で追えない程の速さで村人たちを斬り伏せた...
ヨハン|ヒッ...!なんで、なんでそんな簡単に人を殺せる!あなたは間違ってる!...俺にはあなたの方がよっぽど鬼に見える!
弥吉|ヨタには俺が村人たちを斬ったように見えたのか...よく見てみろ
ヨハンN|そう言われてよく見てみると確かに血は出ていない...
弥吉|刀の背で打って気絶させた。今のうちに山を下るぞ
ヨハンN|差し出された手をとってもいいのか、この人に...弥吉さんに着いて行ってもいいのか。 そんな疑問が頭に浮かんだが、この国に来て唯一優しくしてくれた弥吉さんを僕は信じたかった、 差し出された手を僕は強く掴んだ
弥吉|ふぅ、ここまで来ればもういいだろう
ヨハン|はぁはぁ、ちょっ、休憩させて下さい...
弥吉|そうだな、少し休憩するか
ヨハン|それで、なんで僕を助けてくれるんですか?
弥吉|さっきも言ったろう、お前に惚れたんだ
ヨハン|だからっ!茶化すのはやめてください!何が目的なんですか!?
弥吉|茶化してるつもりもないし冗談を言ってる訳でもない、惚れた相手を助けるのは当たり前だろ
ヨハン|じゃあ、僕に惚れてるって言うなら証明してみてください!
弥吉|証明しろと言われてもな...
ヨハン|(やっぱり僕に惚れてるって言うのは嘘なんだ!この人の狙いはいったいなんな)
弥吉|※出来たらリップ音&被せるように
ヨハン|...っ!ん...っ!ちょ...!...ちょっと!何するんですか!?
弥吉|証明しろと言ったのはヨタだぞ?
ヨハン|それは...っ!そうですけど...
弥吉|嫌だったか?
ヨハン|そういう問題じゃないです!
弥吉|嫌とは言わないんだな
ヨハン|なに笑ってるんですか!?
弥吉|さあ、なんだろうな。それでだ...その薬と言うのはどういう物なんだ?
ヨハン|まさか...着いてこようとしてます?
弥吉|当然だ、1人より2人の方が何かといいだろ...それにヨタ、お前には用心棒が必要だ。これから先、殺されそうになるなんて山ほどあるぞ?
ヨハン|それは...そうですけど、僕の旅に着いてきて弥吉さんになんの得があるんですか?
弥吉|なんだそんなことか...ヨタと一緒にいれるだけで俺には得なことなんだがな
ヨハン|あなたは...っ!またそんなことを言って誤魔化す!
弥吉|本当のことなんだが...強いて言うなら修行も兼ねての提案だな
ヨハン|修行? 弥吉|襲ってくる奴らを相手にしてたらおのずと修行にもなるだろ、それにヨタと一緒にいたら強者とも巡り会えそうだしな。
ヨハン|(たしかに弥吉さんが一緒に居てくれたら心強いし身の安全も確保できる...)
ヨハン|そうですね...それならお互いに利があるし、お願いします
弥吉|それでどんな薬なんだ?
ヨハン|それが...どこにあるのかも名前も分からないんです。唯一分かってる事はこの絵だけで
弥吉|絵だけで見つけるのか...見てもいいか?
ヨハン|あ、はい、どうぞ
弥吉|...これは、秘仙草〈ひせんそう〉だな
ヨハン|知ってるんですか!?
弥吉|あぁ、前に一度見たことがある。確か加賀...そうだ加賀のボロ寺の爺さんに実物を見せて貰ったことがある
ヨハン|ほんとですか!?これで...これで母を元気にすることが出来る!弥吉さん!ありがとうございます!早速その加賀?に向かいましょう!
弥吉|先陣切って歩き出した所に水差すようだけどヨタ、道わかるのか?
ヨハン|......弥吉さん、案内お願いします 弥吉|フッ...こっちだ
ヨハンN|それから僕と弥吉さんの2人の旅が始まった。最初は弥吉さんに警戒していた僕も弥吉さんの人柄と優しさに触れて、次第に心を開くようになっていった...いや、もしかしたらこの時から弥吉さんに惹かれていたのかもしれない。 紀伊を出てから半年一緒に旅をしたけど弥吉さんが僕に手を出すことは1度も無かった。そして別れの日...
ヨハン|弥吉さんのおかげで秘仙草も手に入れることが出来たし無事にまた平戸まで戻ってくる事が出来ました!今まで本当にありがとうございました!
弥吉|俺もヨタと一緒に旅が出来て楽しかったよ、ありがとう。お袋さん、元気になるといいな
ヨハン|はい...
弥吉|どうした?嬉しくないのか?
ヨハン|嬉しいですけど...弥吉さんと離れるのが切なくて、
弥吉|ヨタ...
ヨハン|だって僕は!あなたのことが、弥吉さんのことを愛してしまったから......離れるのが辛いんです ※セリフの途中から弱々しく涙を我慢するように
弥吉|ヨハン...
ヨハンN|そう言うと弥吉さんは僕を抱きしめた
弥吉|俺がずっと我慢してたのに...お前は
ヨハンN|弥吉さんの声が少し震えているように聞こえる
弥吉|ヨハン、愛してる
ヨハンN|弥吉さんの手が僕の頬にそっと触れる
弥吉|※出来たらリップ音(軽め)
ヨハンN|優しいキスだった、涙が堪えきれなくなった
弥吉|これで一生会えなくなる訳じゃない、いつかまた会える、俺はそう信じてる。 だからそんな顔するな
ヨハン|そうですね、僕もそう信じてます ※泣くのを精一杯我慢するように
弥吉|ほら、もうすぐ船が出るぞ......またな
ヨハン|また...どこかで
Fin.
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