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『俺は永遠の夢を見る』作者:あれん

~登場人物~ ♂⤑2 ✰︎アシル(♂)『80』 冒険者を目指す普通の男の子・不死者 ✰︎ディオン(♂)『46』 悪魔・好物は人間 『』⤑セリフ数 ~記号説明~ (N)⤑ナレーション 所要時間⤑15〜20分 【物語START】 アシル 「もう嫌だ…やめてくれ…痛いのはもう嫌だ!!」 ~間~ アシル 「んんーー!(伸びをする) 今日も良い天気だなー! 絶好の修行日和だなー!」 アシル(N) 『俺はアシル。冒険者を目指す、ごく普通の村人だ。 この村では15歳になったら村を出ることが許されている。 俺は今14。 だから15の誕生日になったらすぐに出て冒険をするんだ。 でも、双子の妹セシルに言うと、行かないでくれと泣いてしまう…どうしたらいいんだろう…』 アシル 「…って、こんなこと考えててもしょうがねぇ! 俺は誰がなんと言おうと村を出るって決めたんだ! だから修行してもっと強くなるぞ!!」 アシル(N) 『俺は修行をする為、いつもの森へと出掛けた。 そして時間はあっという間に流れ、夜。』 アシル 「はぁ…やり過ぎた…もうこんな時間か… 早く戻らないとみんな心配するな!」 ~走る~ アシル 「ん?なんか村の方が騒がしいな? 今日なんか祭りでもあったっけ?」 アシル(N) 『疑問に思いつつ村へと向かう。 村についた俺は目を疑った。 目の前には変わり果てた村の姿、変わり果てた村人の姿があった。』 アシル 「…な、なんだ…これは… はっ!! みんなは!?父さん、母さん、セシルは無事なのか!?」 アシル(N) 『俺は家まで全力で走った。』 アシル 「どうか、どうか無事でいてくれ!!」 アシル(N) 『…だが俺の願いは目の前の光景によって打ち砕かれた。』 アシル 「…えっ、父さん…母さん…セシル…うそ、だろ…?」 アシル(N) 『目の前には変わり果てた家族の姿。 そして、全身を赤く染め、美味しそうに肉を頬張る1人の人物。』 アシル 「嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ!! こんなの俺は認めない…こんなの…こんなの…!!」 ディオン 「ん?なんか騒がしいと思ったら、美味しそうな人間がもう1匹…ジュルッ いただきまーす。」 アシル 「お前は…俺が殺す!! うおおおおお!!」 アシル(N) 『俺は持っていた剣で目の前の人物に斬りかかった。 が、剣はあっけなく手から離れ、目の前には大きな口が… その瞬間、俺は言葉にならない叫びを発していた。』 アシル 「がっ!?あああああ!!!!!」 アシル(N) 『俺の右腕が奴に食われた。 奴は休む暇もなくまた俺へと視線を向ける。』 ディオン 「なんだこいつ? 他の奴とは比べ物にならないくらい美味い…」 アシル 「がっ!あっ!はぁ、はぁ…やめ、やめてくれ…もう、いや…」 ディオン 「ははは!やめるわけないじゃん! こんな美味しいものを残したらバチが当たる。」 アシル 「あああああああ!!!!!痛い痛い痛い痛い!!!!」 アシル(N) 『俺は左腕も食べられてしまった。 その次は右足、そのまた次は左足。 そこで俺の意識は途絶えた。 ああ俺死んだのか。呆気ない最後だったな。 父さん、母さん、セシル、俺もそっちに行っちまったみたいだ…』 ディオン 「おーい。 おーい、起きろよー。」 アシル 「ん…ん?ここは?俺、死んだんじゃ…って、なんだこれ!? 拘束されて身動きが取れねぇ…って、お前!?」 ディオン 「俺も死んだと思ったらいきなりお前の体が再生したんだ。 だから思ったよ、これは神様からのプレゼントなんだって…」 アシル 「再生…?」 ディオン 「この世には不死者(ふししゃ)がいると聞いたことがある。 だが、それが君とはな…俺はつくづく運がいい」 アシル 「不死者…俺が…」 ディオン 「だからもう飯には困らないな。」 アシル 「!?お、俺を食べるつもりか!?」 ディオン 「ん?当たり前だろ。 お前は俺の食料だ。逃げることは出来ない。」 アシル 「い、嫌だ! もうあんな痛い思いはしたくない!!」 ディオン 「そうか、痛かったか…しょうがない。」 アシル 「た、食べるのやめてくれるのか!?」 ディオン 「あー俺は美味いものは味わいながら食べる派だからゆっくりなんだよ。 でも、痛くて辛いんだったら一瞬で終わらせてやる。」 アシル 「…えっ? あ、い、嫌だ…嫌だ!ああああああ!!!がっ!!ああああああ!!!」 アシル(N) 『俺はまたこいつに食べられた。 あまりの痛さに気を失ってしまった。 俺はこの地獄から抜け出すことは出来ないのだろうか。 もう目を覚ましたくない…このまま眠り続けていたい… そんな願いも虚しく、俺は奴に無理矢理起こされた。』 アシル 「がっ!?あ…あ?ああああああ!!!」 ディオン 「あっやっと起きた。 お前どんだけ寝てんだよ。」 アシル 「手が…手が!!!ああああ!!!」 ディオン 「手1本食われたぐらいで騒ぐなよな。 全然起きないお前が悪いんだぞ?」 アシル 「痛い痛い痛い痛い。」 ディオン 「ああー、話にならねぇ……あっそうだ。 おい、ちゃんと話を聞いたら今日はもう食べないでおいてやる。」 アシル 「……えっ?」 ディオン 「だから、今ちゃんと話を聞いたら今日は食べない。」 アシル 「ほ、本当なのか?」 ディオン 「あぁ、本当さ。」 アシル 「…ぐっ…ちゃ、ちゃんと話…聞く…なんだ?」 ディオン 「へぇー。そんなに食べられたくないかー。 必死になるところすごく可愛いな…ジュルッ」 アシル 「ひっ!」 ディオン 「あぁーすまない、つい涎が。 で、話だがお前の名前はなんだ? 名前を知っていないと不便だからな。」 アシル 「ア、アシル…」 ディオン 「アシルか、いい名前だな。 アシル、アシル、アシル…ああ、やっぱダメだ。」 アシル 「がっ!?ああああ!!!」 ディオン 「アシル、美味しいよ。 残さず食べてやるからな。」 アシル 「ああああああ!!! や…約束と…ち、違うじゃ…ああああああ!!!」 ディオン 「あぁ、俺って約束守ったことないんだ。 悪魔だからな。」 アシル 「あく…ま? 悪魔って…人食べるのか…?」 ディオン 「んや、普通は食べないな。 普通はな。 だが俺は人の美味しさに気付いちまった。 それからはずっと人を食べている。 こんなに美味しい人間は初めてだがな。」 アシル 「あああああ!!!や、やめて…もう嫌だ…」 ディオン 「あはっ!アシルは可愛いなー。 ずっと食べていたいよ。」 アシル 「もう嫌だ…やめてくれ…痛いのはもう嫌だ!!」 ディオン 「んじゃ俺の名前呼んでくれたらやめてやるよ。」 アシル 「な…まえ?」 ディオン 「ああ。俺はディオン。 気軽にディオンと呼んでくれ。」 アシル 「ディ…オン…」 ディオン 「ん?聞こえないなー。」 アシル 「がっ!!ディオン…ディオンディオンディオンディオン!!!」 ディオン 「あはっ!良く出来ました。」 アシル 「がっ!!あああああああ!!!!!」 アシル(N) 『あれからどれだけの月日がたっただろうか。 俺はディオンに永遠と食べられ続けている。 ディオンは毎日が幸せそうだ。 俺は…死にたい、死にたい死にたい死にたい。 でも、死ねない… どうやったらこの地獄から抜け出すことが出来るのだろうか。 どうやったら… ……俺よりも美味い不死者を連れてくれば… はっ!! 俺は何を考えているんだ!』 ディオン 「アシル。」 アシル 「な、なんだ?」 ディオン 「お前、食べられたくないか?」 アシル 「!? な、なんだよ急に。 そりゃ食べられたくないに決まってんだろ!!」 ディオン 「そうか。じゃあお前にチャンスをやろう。」 アシル 「…チャンス?」 ディオン 「ああ。お前よりも美味いのを連れてこい。」 アシル 「えっ?」 ディオン 「だから、お前よりも美味い奴を連れてきたら食べるのをやめてやる。」 アシル 「ほ、本当なのか?」 ディオン 「ああ。」 アシル(N) 『きっと嘘だ。 人を連れてきた所で俺は食べられる。 でも、これで外に出ることが出来る。 助けを求めよう。』 アシル 「や、やる。」 ディオン 「そうか。 じゃあ、これ。」 アシル 「これ…」 ディオン 「銃だ。」 アシル 「!?」 ディオン 「どうした?これで殺して連れてこい。 まさか、逃げようとしてた訳じゃないよな?」 アシル 「し、してない!!」 ディオン 「そうか。 じゃあ楽しみにしているぞ。」 アシル(N) 『俺はディオンから銃を預かると外へ出た。 久しぶりの外。 …ああ、何ヶ月ぶりだろうか。 俺は辺りを散策した。 何もない… 村も何もない。 俺は歩いた。ひたすら歩いた。 すると村が見えてきた。』 アシル 「!? む、村…村だ!!!」 アシル(N) 『これで助かる…俺は村までがむしゃらに走った。』 アシル 「ひ、人がいる!! あのすみません!! 助けて下さい!!俺、悪魔に囚われていて!!」 アシル(N) 『次の瞬間目の前の村人が…死んだ。』 アシル 「…えっ?」 ディオン 「やっぱりな。」 アシル 「えっ?えっ?」 ディオン 「こうなることは予想出来ていたから後をつけていたんだよ。」 アシル 「えっ…。」 アシル(N) 『…俺は、こいつからは逃げられない。 どうやっても逃げることは出来ない。』 ディオン 「アシル、お前は俺から逃げられない。永遠にな。」 アシル(N) 『そう言ってディオンは俺を食べる。 幸せそうに。』 アシル 「ぐっ…ああああ……ん? 今日は…全部食べないの、か?」 ディオン 「なんだ?全部食べられたいのか?」 アシル 「そ、そういう訳じゃねぇ!」 ディオン 「ははっ冗談だ(笑 …気絶されたら困るからな。」 アシル 「えっ?」 ディオン 「お前にはここの村人全員殺してもらう。」 アシル 「…は?」 ディオン 「体が再生したら殺しに行くぞ。」 アシル 「…えっ。」 アシル(N) 『俺はディオンに言われるがまま村人に向かって銃を撃った。 響き渡る悲鳴、鼻につく血の匂い。 気持ち悪い、気持ちわるいはずなのに…』 アシル 「なんで俺、笑ってるんだ?」 ディオン 「はははっ! 面白いことになりそうだ。」 ~間~ アシル(N) 『あれから数ヶ月が経った。 俺は今でもディオンに食べられ続けている。 だが、今までと違うのは俺も人を食べているということだ。 あの日俺は人を殺すことに快感を覚えていた。 そして、 ディオンは俺をいつも幸せそうに食べているけど人ってそんなに美味いのか? と疑問に思った。 そして殺した村人を連れて帰り食べると今まで味わったことの無い味が口いっぱいに広がった。 感動を覚えた俺は毎日人を殺し、食べている。』 アシル 「ディオン! 見てくれよこの美味そうな人間!!」 ディオン 「おっ本当だ美味そうだな! だけど…アシルには負けるな。」 アシル 「ぐっ…い、いきなり食べるなよ… はぁ、はぁ、慣れたとは言っても急には困る…」 ディオン 「すまんすまん(笑 つい我慢できなくてな(笑」 アシル 「もう、ディオンはしょうがないな(笑 優しく食べてくれよ?」 アシル(N) 『いつになっても食べられると痛い。 だが俺は今幸せだ。 好きな人と過ごし、好きな人に食べられ、好きな人と一緒に人間を食べる…こんな幸せ他にはない。 …ああ、いつかディオンも食べてみたいな…』 END



キーワード:狂気・シリアス・叫びあり・2人・男2・あれん

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