[私の声]
[これは、【私】と【彼】の物語。]
私『…痛い…けど、これぐらい慣れてるわ…【いつもの事だもの】』
[私の声]
[ここは、とある田舎の街。何もかも奪い合い、罵りあいをする。そして、【差別】だって起きる]
私『…我慢よ…我慢……。』
[私の声]
[私は自分が生まれた場所を知らない。生まれてからずっと…街の皆に罵倒されてきた。『お前は【化け物】だ』と。]
私『痛い…寒いっ……。』
[私の声]
[壁の端にくっつきながら、次の日まで過ごす。それがいつもの事…。けど、今日は違った。]
彼『……大丈夫かぃ?』
私『……わ、私に関わらない方がいいですよ…。構わないでください。』
彼『そんな!こんなに凍えてるじゃないか!さぁ、傘を!!』
私『私に構わないで!!』
[私の声]
[差し出された傘をはらいながら、彼の手首に触れてしまった。彼の手首が紫色に変色していく]
私『あぁ、あぁ……!!やってしまった!!ごめんなさい!ごめんなさい……!!』
彼『…大丈夫だよ、【どうせ死ねないからね】』
私『…へ?』
[私の声]
[そういうと、彼は…先程触れた手首を見せた。紫色に変色していた手首がみるみる元に戻るではないか。]
彼『…ほらね、【また死ぬことは出来なかった。】』
私『なんで……そんなに死にたいんですか……?』
彼『…この歪んだ街とおさらばしたいからさ。見てるだけでも嫌気がさすんだ。けど…』
私『けど…?』
彼『死んでたら、君に会うこともなかった。』
[私の声]
[そういった彼の表情は、優しくも悲しげな表情をしていた。思わず、私の心が苦しくなった。]
彼『…あ、ここで話してるのもなんだ。僕の家においで、手当してあげよう。』
私『……どうして…。』
彼『ん?』
私『私に…構うんですか…?貴方も見たでしょ!?私は!!』
彼『だからだよ。』
私『えっ?』
彼『君なら…いつか僕を殺してくれる…さっきの手首をやられた事で確信したよ。』
[私の声]
[彼は至って真面目だった。胸の高鳴りが収まらない…。まるで何かを求めてるようだった。]
彼『僕が死んだら、家は君にあげるよ。金貨も君のものだ。』
私『……くださいっ…。』
彼『?』
私『……愛をくださいっ……私に……。』
彼『…君は愛されたいのかい?なら、殺されながら君を愛してあげよう……。』
[私の声]
[こうして私は、彼の家に住み着くようになった。彼は言葉通りに
【私に殺されながらも愛してくれた】しかし、そんなこと長くは続かない。]
私『…戦争が始まる?』
彼『あぁ。』
私『……貴方は逃げてください。私はここに残ります。』
彼『でもっ!!』
私『いいから逃げてください!貴方は生きてください!!』
[私の声]
[ふと出た、その言葉は…彼の心にどう刺さったかは分からないまま、
戦争が始まった。]
私『もし…この戦争が終わったら、また傘をさしながら私に話しかけてくださいね……。』
[私の声]
[9時間にも及んだ戦争は、一旦停戦を迎えた。雨に濡れた配線、焼けた病院、並んだ送電灯(そうでんとう)、止まったままの観覧車……。周りは無惨だったらしい…そして私も、瀕死状態に陥っていた。]
私『……結局、死ぬのか…私。……もっ…と…生きたかったな…。』
彼『……君を死なせる訳にはいかない。』
私『……え…っ?』
[私の声]
[意識が朦朧(もうろう)としている中、彼の姿が見える……あぁ、走馬灯(そうまとう)なのかな…そう思っていると…彼が私を抱き寄せる。]
彼『…僕が君に贈る、【最初で最期の言葉】だ。』
[私の声]
[そういう彼は、私にキスをした…それも深く…長く。そして一言……
【愛してる】と言った途端、彼は倒れた。]
私『…まさか……そんな…!ダメっ!!』
彼『よかった…回復したんだね…。』
私『なんで!なんでこんなことを!!』
彼『…君は…生きるんだ……僕より長く…。』
私『嫌だ、まだ私…何も言ってないじゃない!!』
彼『…幸せに…なるん…だ、いい…ね?』
私『まって!!ダメっ!!』
[私の声]
[彼は、全身紫色に変色し……息絶えた。私の毒を全て吸い取ったらしい。]
私『……私も愛してました……。ありがとう。』
[私の声]
[あの時以来、私は【死ななくなって】しまったけど、彼の分まで生きてるよ。安心してね……。]
Fin
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