【登場人物】
キセル屋(不問)
煙管を作って売っている兎。キセルの他に刻み煙草や香炉、お香を作っている。
煙管の修繕や掃除も受ける職人。
人望が厚く、世話焼き。べらんめぇ調でしゃべる、喧嘩っ早い江戸っ子。
三尾(不問)
九尾に付き従う世話役。物静かであまり主張しないことから九尾に振り回され気味。最近破天荒な九尾のおかげで尻尾に禿(はげ)が出来た様子。
九尾(男性)
煙草と酒と女を愛する伊達男。
基本的にだらしないが、狐の中ではひときわ強い力を持っているらしく、狐の中では首(おびと)と呼ばれている。
細かいことを気にしない兄貴分で人望が厚い。
ぬえ(男性)
千年以上生きている自称「天下の大妖怪」
人の話を聞かない尊大な性格。
しかし、ぬえであることを誇りに思っており、理想が高い。
そのため、周りとの衝突が尽きない。
ぬしさま(不問)
妖たちが住む山の頂上にある神社を根城にする山と森の守り神。
どちらかというと妖に近い存在。
感情の起伏が薄いが、興味を持ったものにはとことん情けをかける。
普段感情を出さない分、幼いところがある
烏天狗(男性)
物腰の柔らかい読書家の天狗。
キセル屋の顧客の一人。煙管と本を愛する天狗らしからぬ穏やかな性格。
ぬしさまの囲碁の相手もお手の物
+++
三尾、キセル屋のもとを訪ねる
三尾「キセル殿、ご無沙汰しております」
キセル屋「おお、三尾!あれから尾(お)っぽの具合はどうよ?」
三尾「お蔭さまで。猫又に薬を出してもらったので、ご覧の通り。ハゲもだいぶ良くなりました」
キセル屋「そいつぁ、何より。けど、九尾の旦那の相手も程々にしとけよ?今度こそ胃に穴が空いちまうぞ?」
三尾「そうですね、肝に銘じておきます。…新しい香り袋を頂けますか?」
キセル屋「はいよ、前のと同じ香りでいいかい?」
三尾「はい、お願いします」
キセル屋「よしきた!えぇと…侍従は…」
どおおん!!と大きな音と地鳴りがする
キセル屋「うおお!?なんだなんだ、地震か!?」
三尾「…いえこれは…何かしら人為的な揺れだと思われます」
キセル屋「人為的な揺れ?なんだそりゃ?誰かが山を揺らしたってか」
三尾「キセル殿、こちらへ移動しましょう、その方が安全です」
キセル屋「ああん?ますます理解出来ねぇぞ?どういう事だ?」
キセル屋、三尾の言葉に従ってその場を離れる。
三尾「すぐ分かりますよ。あと三つ数えればこちらに到達するかと。ああ、そろそろですね」
またどおおおおん!!と大きな音と土埃が辺りに舞う。
ぬえ「おう、九尾!てめぇ、これしきの攻撃で根をあげてんじゃねえだろうなぁ!?そんなんじゃ、狐の「首(おびと)」の名が廃るぞ!」
九尾「はっ!誰が根をあげてるって!?笑わせんなよ、老いぼれが!こんなショボい攻撃なんざ屁でもねぇんだよ!ど雑魚が!!」
ぬえ「いっちょまえに言うようになったじゃねぇか、いいぜ?その生意気な鼻っ柱、完膚無
きまでに叩き潰してやろうじゃねぇか!!」
九尾「やれるもんならやってみろってんだ!このクソジジイ!!」
九尾とぬえが喧嘩をする回りは地面がえぐれたり、木々が倒れたりしている
三尾「ああ、やはり。オチは見えていましたよ…首(おびと)」
キセル屋「九尾の旦那とぬえの旦那!?ちょ、ちょいと!ご両人!こんな狭い山の中で暴れるのは辞めてくれ!三尾!あんたからも何か言ってくれ!」
三尾「キセル殿。上をご覧下さい。木々の隙間から青空が見えます、明日もよく晴れそうですね」
キセル屋「おぉい!現実に戻ってこい三尾!!」
+++
ぬしさまの社
ぬしさまと天狗が碁を打っている、
ぬしさま「…騒ぞうしい」
天狗「如何されましたか、ぬしさま?」
ぬしさま「山の中で、狐と鳥が喚(わめ)いている」
天狗「狐と鳥……。ああ、九尾とぬえ殿のことですな。…(耳を澄ます)ほぉ、これは…随分と暴れ回っているようだ。ふうむ…山の地形が変わってしまいそうですな」
ぬしさま「…我が領域を荒らすとはいい度胸だ。沈ませる」
ぬしさま、地面をダン!と踏みしめる
ぬしさま「泰山(たいざん)、鳴動(めいどう)!!」
***
キセル屋「んん?なんだ?微かに地鳴りが…」
三尾「はっ、(なにかに気づくように)これは…山全体の揺れですね。地震でしょうか?」
キセル屋「いいや、こいつぁ…。ぬしさまの『泰山鳴動』か!三尾!早いとこずらかる
ぞ!」
三尾「は、はい!」
キセル屋と三尾、その場から逃げる
次の瞬間、ゴゴゴ…と山全体が揺れる
ぬえ「うん?」
九尾「なんだ…?地震…?」
九尾とぬえ、思わず戦いの手を止める。
その瞬間、地面が割れ木々が倒れてくる。
ぬえ「うおおおお!?」
九尾「な、なんだなんだ!?」
ぬえ・九尾「わあああ!?」
ぬしさまの泰山鳴動に見事に巻き込まれた2人
+++泰山鳴動の説明(セリフじゃない)
泰山鳴動:山が大きく揺れ、地盤沈下と共に土砂崩れがおき、山が部分噴火する技
ぬしさまの山は活火山であり、ぬしさまが怒ると大噴火を巻き起こす
+++
キセル屋「…お、収まったか?」
三尾「そのようです。流石、ぬしさまの泰山鳴動…。この辺りの杉林が土砂で全て流されて
しまいました…」
キセル屋「いやいや…地盤沈下と土砂だけで済んでよかった…。噴火なんてされたらシャレにならん」
三尾「ええ、山火事になったら大変です…」
土砂の山の中から九尾が這い出す。
九尾「いっててて…くそっ!俺としたことが油断した!」
ぬえ「あーあ、情ねぇな、九尾。自慢の毛並みが泥まみれだぜ?」
九尾「老いぼれが!勝手に言ってろってんだ!てめぇ一人だけちゃっかり避けやがって!」
ぬえ「へっ、日頃の鍛錬の差だよ。俗物咥えて怠けてるてめぇと一緒にすんな」
九尾「あ?俗物だと…?てめぇ、二度も俺の煙草を俗物呼ばわりだぁ?!くそ!やっぱりその生意気な面、吹っ飛ばしてやる!!」
ぬえ「その形でどうするってんだか。これぞ本当の負け犬の遠吠え、てな!」
九尾「やかましい!!そこ動くなよ!俺の狐火で、跡形もなく燃やし尽くしてやらァ!!」
ぬえ「へっ、犬っころのちゃちな炎なんぞ効くかってんだ!」
またゴゴゴ…と山が揺れる。
今度は爆音とともに部分噴火がぬえと九尾の近くで起こった。煙と爆発に巻き込まれる2人
九尾・ぬえ「うわぁぁあ!!?」
遠くから眺めていたキセル屋と三尾
キセル屋「さて、第3波が来る前にあっしらはここから離れるとしようか」
三尾「そうしましょう…」
***
ぬしさまの社
ぬしさま「…ようやく静かになったな」
天狗「ぬ、ぬしさま…。あの、我ら天狗の杉林が…」
ぬしさま「うん?……ああ、すまぬ。うっかりそなたらの住処まで破壊してしまった」
天狗「…ああ…わたしの家が……」
終
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