〔登場人物〕
・イクヒロ(♂)…刃物男で神出鬼没。住居の中でも現れる。
・キリコ(♀)…専業主婦。
・リン(♀)…ニュースに出てくる伊田凛のこと。イクヒロにより刺殺される。
・ヒロヤ(♂)…トラオとメグミの2人が所属する警察署のアナウンス担当。
・チヒロ(♀)…スポーツ報告というスポーツ紙の会社のスタッフ。
・トラオ(♂)…警察官。メグミの先輩。
・メグミ(♀)…警察官。トラオの後輩。
・トモアキ(♂)…ニュースキャスター。
・アイ(♀)…今井藍のこと。イクヒロとの不倫相手の1人。
・エミ(♀)…警察官。
・アスカ(♀):河野明日香のことで、イクヒロと不倫した1人。
・ナレーター(N表記/♂)
〔注意事項〕
・暴力的なシーンやグロテスクなシーンを含みます。耐性のない方はご遠慮ください。
・米印はト書きです。読まないでください。
・カッコ内は読んでください。
・このお話は男性4人と女性6人の、合計10人で考えている声劇です。兼任は自由なので、必要演者数が変わる可能性もあります。
(※男性はヒロヤとトモアキを兼任でお願いいたします。女性はアイ・アスカ・チヒロの中で2役の兼任を考えています。)
・このお話はフィクションです。
〔STORY〕
トモアキ:ニュースをお伝えします。今日の午後2時半頃、万幹県(まんかんけん)四家市(よんかし)にて刃物男が帰宅女性の家の襖(ふすま)に隠れているという事件が発生し、この家の住人である伊田凛(いだりん)さんが心臓を抉る(えぐる)ように刺され死亡が確認されました。
現在犯人は逃走中で警察は行方を追うと共にこの事件の調査を進めています。
イクヒロ:3度目の不倫がバレた腹いせでこんなことヤっちゃっているけどさ。
このリンって女性は、俺が二番目に不倫した相手だっけな?なかなかのヤリ手でさ。
…ま、今は故人となってしまったわけだ。この家の他の住人には申し訳が立たないけど。
N:2121年5月26日。待ち伏せしていた刃物男による殺人事件が発生。住居の信州に関しては破損部分がどこにも確認できておらず、ある意味で完全犯罪が達成してしまった。
閑静な街中で起こってしまったということもあり、町全体が不安に包み込まれていく。
キリコ:さっきから警察官が犯人捜査のために来ているけどパトカーやらヘリやらドローンやらで監視されていて心配だわ。
買い物に行こうにも行けないじゃない。一体どうしてくれるのよ?
N:監視の目が突然強化されるわけだ。自由を奪われていることと何ら変わりがない。
食事に行こうにも買い物に行こうにも、そう易々と外に出してくれるわけがない。
イクヒロ:人の目はそうだけど、防犯カメラにも死角はある。そこを通ればセンサーでも設置されていない限りは問題なし。
それに、いざとなればEMP(イーエムピー)だって装備しているんだ。ドローン停止には十分すぎる。
2階以上にスタンバイできないのが悩みだけど、こう見えて元野球選手なんだ。脚力もあるんだぜ?盗塁も当たり前のようにしていたし。
次は、どちらの女を“処理”しようか…。
N:セイデンイクヒロ。35歳。元野球選手。能力としては十分すぎるほどに強く、先輩の盛り上げ役としても振る舞っていた。
しかし、彼には致命的な欠点があった。“女付き合い”である。既婚者であるにも関わらず不倫。一度だけでも問題なのに、最終的には3度の不倫。よくここまでできたものだ。
あれだけ注意をしても無視をするのだ。辞めさせられて当然である。
トラオ:メグミくん。何か犯人の情報は得られたか?
メグミ:トラオ部長。今出ている情報によれば、身長は180センチほどで上下で黒い服だったとのこと。男性と思われていますね。
ただ…。
トラオ:ん?どうした??
メグミ:その時、W(ダブリュー)と記された黒いキャップを被っているのを見たという証言が少なからず上がっています。
この地域でWマークと来たら…。
トラオ:…何となくだが、この県のスポーツチームにそんなところがあったな。
メグミ:まさか、とは思いますが…。
トラオ:我々警察には、そのまさかが答えになることが少なくない。
“パトロールの強化とSNSによる情報収集を大支給開始せよ”
メグミ:“了解!”
キリコ:あら?メールだわ。
何かしら??
N:メールだ…。
(※逃走中のナレーションのように)
キリコ:県から警察発信で届いているのね。
どれどれ?
「現在発生している殺人事件に関し、とある容疑者が浮上しました。
その名も、セイデンイクヒロ。
御存じの方も多いでしょうが、万幹県とはかなり所縁(ゆかり)のある元野球選手です。何か心当たりのある方は、以下の連絡先にすぐにご連絡ください。
ご協力をお願いいたします。」
そういえば、この男、また何かやらかしたってことでニュースになっていたわね。
腹いせかしら?自己中心的な男ね、いい年をして。
チヒロ:「イクヒロという男ですが、伊田凛さん以外に“河野明日香(こうのあすか)”と“今井藍(いまいあい)”という2人の女性と不倫していました。もしかすると、そのどちらかを狙っている可能性があります。
一刻も早く彼女たちの身の安全の確保をお願いします。」
送信完了。
電話でも念のため伝えておきますか。
N:チヒロ。スポーツ報告所属のスポーツライターでプロ野球を担当している。
過去に奴の密着取材を敢行したことがあるものの、幸いなことに肉体的関係は持ってはいない。
メグミ:部長!無線です!
トラオ:なんだ?
ヒロヤ:“メグミとトラオへ。君たちは、すぐに今井藍という女性の自宅に向かい彼女の身の安全を確保せよ。
確認が取れ次第、警察署に向かえ。”
トラオ・メグミ:“了解!”
N:2人は現場に急行。彼女の無事を確認。
メグミ“アイさん!今井藍さん!
警察です!!助けに来ました!!”
アイ:警察官さん!来てくれたんですね!!
メグミ:はい!
貴重品を直ぐにまとめて、パトカーに乗ってください。安全な場所に避難しましょう。
アイ:お願いします。
N:メグミ、アイの安全を確保しトラオが待機しているパトカーの中へ。
トラオ:さぁ!早く乗って!!
アイ:失礼します!
トラオ:“こちらトラオとメグミ。ターゲットの安全の確保を確認。そちらに向かいます。”
ヒロヤ:“こちらヒロヤ。確認した。
現場に急行せよ。“
N:その頃、明日香の自宅付近。
イクヒロ:さて、アスカを処理しますか!
エミ:あら?イクヒロさん。
イクヒロ:(ギクっ!!)
…あ、あ。どうもww
エミ:少しお話があるのです。
(※胸元から見えた警察証明書)
イクヒロ:(…あ、警察官でしたか。)
な、何のことやら。
トラオ:あなたを、殺人の罪と不法侵入の罪で逮捕します。
エミ:詳しいことは、是非とも署にて。
アスカ:…一体何の用??
イクヒロ:(チャーンス!!!)
貴様も死んでもらおう!!
トラオ:こら!!それを手から離せ!!!
エミ:アスカさん!早くパトカーに乗って!!
アスカ:…は、はい!!!
イクヒロ:アスカー!!アスカー!!
“グヘっ!!”
(※文字にならない声)
トラオ:“詳しいことは署でな”
(※イケボ)
N:結局、犯人はこの男だった。
悪びれもせず懲りもせず。反省をしないものだ。
ヒロヤ:何故スター選手だった君がこんな真似をしたんだ?
イクヒロ:簡単です。
“ちやほやされたかったから”
ヒロヤ:キミは既にちやほやされているはずだ。
イクヒロ:若い女性に弄ばれたかった。それだけです。
肉体的関係も3人にはかなり持ちました。
ただ、別れようと不倫相手側が伝えて来たので、殺してあげたという訳です。
“待ち伏せ”という点に関しては、少しでも相手に脅しをかけるつもりでした。当たり前ですが、不法侵入もしています。侵入方法に関しては、…。
N:聴取の様子をミラー越しに伺う2人。
メグミ:スターも大変なんですね。
トラオ:そりゃそうだ。俺たちよりも自由が利かないんだ。移動と試合ばかりじゃフラストレーションも溜まるばっかり。はけ口の1つや2つ、ほしいものさ。
メグミ:甘えたいと?
トラオ:それもあるだろうな。
トモアキ:ニュースをお伝えします。先日発生した殺人事件の犯人が逮捕されました。
犯人は、元野球選手の“セイデンイクヒロ”35歳。第2の殺人が起こる前に身柄の拘束に成功しました。
イクヒロは容疑を認めており、“異性にちやほやされたかった”との供述をしていました。また、殺人の動機に関しては、“相手が別れようと振ったため、腹いせで殺した”と供述しておりました。
今後、さらなる調査が行われる模様です。
今夜のニュースはここまでです。また明日。
~完~
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