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『Belive in yourself』作者:schön Ton(シェントン)

【登場人物】 りょう(男)・・・演劇部のエース。失敗が続き自信を失っている。 なつき(女)・・・りょうの友人。演劇部。ラジオアプリで配信をしている。 たいち(男)・・・演劇部の部長。


涼野(男)・・・ラジオDJ 店員(不問・男でも女でも可)・・・りょうがよく行くコンビニの店員。(別キャラとの兼任可) 【ストーリー】 店員:200円お預かりします。レシートはいかがなさいますか? りょう:あ、いらないです(小声で自信がなさそうに) 店員:かしこまりました。36円のお返しです。 りょう:え・・・いやレシート・・・いらな 店員:? りょう:いや・・・なんでもないです。(小さくため息を吐く) 〈りょう、店を出る〉 りょう:俺、そんな何言ってんのかわかんないのか。(ボソッと呟く) なつき:うん、割と何言ってんのか、聞き取りづらい。 りょう:うっわ、なつき!驚かせんなよ!いつからそこいた。 なつき:今。りょう見つけたから、声かけようと思って。でもりょうったら全然気がつかないんだもん。 りょう:そっか。てか、さっきのだけど、俺そんなに何言ってるか聞こえない? なつき:最近は割とね、ボソボソ何言ってんのかわかんない。また店員さんにレシート渡されてたでしょ、あんたいつもレシートもらわない派なのに。 りょう:見てたのかよ・・・え、ちょっと待て、またって なつき:最近ずっとでしょ?珍しくない光景になってるよ。発声とかちゃんとやってる?日常生活でそれってかなりやばいと思うけど。そんなんで部活どーすんのよ。 りょう:・・・・ほっとけ。 なつき:ほっとけ?ほっとけるならほっとくよ。でも公演もうすぐなんだよ?今日の練習もやばかったじゃん。どーすんの本番。 りょう:あぁ、そうだよな。ほっとける訳ないよな、演劇部のエースの足引っ張りまくってるやつのこと。 なつき:そんなこと言ってないでしょ? りょう:公演のことなら心配すんな。俺、役降りるから。 なつき:は?なんで?大役だってあんなに喜んでたじゃん りょう:・・・・俺みたいなやつには無理な役だったんだよ。これ以上足引っ張るわけには行かない。だから降りる。 なつき:・・・ねぇ、何かあった?悩みがあるなら聞くよ?アドバイスできることもあるかも りょう:いや、いいよ。なつきに話すことはない。てか、お前に俺の気持ちはわかりっこない。 なつき:・・・なによ、それ りょう:帰るわ。 なつき:ちょっ、待ってよりょう、りょうってば!! 〈りょう・自宅〉 涼野:続いては、ラジオネーム、ライスさんからいただきました。 りょう:・・・あ、これ。 涼野:『涼野さん、リスナーの皆さんこんばんは。最近、僕には悩みがあります。ここ最近何をやってもうまくいきません。いつもいつも失敗ばかりで、失敗の無限ループ・・・どうにかしようと頑張れば頑張るほど、考えれば考えるほど空回り・・・いつしか自分自身のことが嫌になってきました。もう、自分に自信がありません。どうすれば、自分に自信を持てるようになるのでしょうか』 りょう:めっちゃネガティヴ。ひっどいお便りだな(苦笑) 涼野:なるほどね。まず、ライスさんに聞きたいんだけど、ライスさんは自分のこと好きかな? りょう:(自分のこと・・・?今の自分のこと、好きだなんて思えない) 涼野:自信って字はね、自分を信じるって書くでしょ?じゃあ、自分のことを信じてあげるためにはどうするか。1番大切なことはさ、自分を好きでいてあげること。好きでもない相手のことを信じるなんて難しいでしょ?自分だってそう。 りょう:・・・・・・ 涼野:といっても、簡単に自分を好きになれたら苦労しないよね。俺も昔は自分のこと大嫌いだったし。だからさ、自分のことを認めてあげられる何か、それをまず見つけてあげることから始めよう。これをやっているときの自分は楽しそう、とか、輝いてる、とか! りょう:自分のことを、認めてあげられる、何か・・・ 涼野:それともう一つ。失敗の無限ループって言ってたけどさ、失敗したっていいと思う。人ってさ、何事も完璧じゃなきゃみたいな風潮あるじゃん?あれ、間違ってると思うんだよね。完璧じゃなくたって正解はあるし、むしろ面白いことが生まれたりもする。何かに失敗してもその失敗が自分の経験になるって活用すればいい。だから今は、色々試して自分と向き合ってみて!応援してるよ!それじゃあ次のお便りは、ラジオネーム・・・ りょう:頑張れるかなぁ、俺…… 〈後日、演劇部の部室〉 なつき:部長ー。 たいち:なんだ? なつき:最近のりょうのことどう思います? たいち:・・・絶不調。あいつ、スランプ真っ只中って感じだよな。

なつき:昨日、りょうから役降りるつもりだって言われました。 たいち:はあ?!だめに決まってるだろ?うちのエースだぞ? なつき:彼自身はエースの自覚ないですけどね。エースの足引っ張ってるのが自分だって・・・私に向かって言った言葉それですよ? たいち:まあ、お前も実力だってエース並みだからな、間違っちゃいない。今足引っ張ってんのは確かにりょうだ。日に日に演技が酷くなっていく。 なつき:部長は、りょうの不調の原因はなんだと思いますか? たいち:思い込みからくる自信の無さ。あいつ、圧倒的に演技うまかっただろ?でもお前がバランサーなのに対して、りょうは自然と自分の心のままに演技ができる、天才。それで逆に浮いてたからな。 なつき:彼、馬鹿ですもんね。全体を見た時に浮いてるってことだけ感じ取って、それで自分の演技が全体の調和を乱してるって勘違いして、自信無くして逆に演技の質落として。今じゃ演じること楽しむどころか切羽詰まりまくりですもんね。 たいち:まあ、りょうのレベルについていけてない俺たちも悪いが。あいつにはなんとかして自信を取り戻してもらわないと。 なつき:肩の力抜いて、演技を楽しいって思えるようなそんなきっかけが必要ですね。 たいち:・・・なあ、なつき。お前のやってる【あれ】に巻き込んでみたらどうだ? なつき:え、あれですか?確かにりょうの表現力ならそっちの方がより輝けると思いますけど・・・ たいち:自信をつけるのにはぴったりなんじゃないか? なつき:私的には恥ずかしいしバラしたくないけど・・・そんなこと言ってられないですね。 たいち:なつき、任せた。 なつき:できる限りのことはやってみます・・・ 〈空き教室にて〉 りょう:なんだよ。こんなところに呼び出して。この前のこと?役降りたいって話なら考えを改めるつもりは・・・ なつき:いや、それについてはまた話したいことたくさんあるけど、今日は別件。 りょう:別件?なんだよ。 なつき:りょう、今日はちょっと私に付き合ってもらう。 りょう:付き合う?いったい何すんの? なつき:ちょっとゲストになって。 りょう:ゲスト・・・? なつき:まあ、説明するよりみた方が早いわ。りょうは流れに合わせてくれたらいいから。初めに言っておくけど、今から私のことは甘夏って呼んで。あんたのことはライスって呼ぶから。 りょう:ちょっと待て。ライスって・・・それ俺のラジオネーム・・・なんでお前が知ってんだよ。 なつき:いいから。あとで説明するから。とりあえず、私のいうとおりにして。わかった? りょう:・・・わかったよ、お前のことは甘夏、俺はライスな。って、スマフォいじって何してんの? なつき:いいっていうまでしばらく黙ってて。始めるよ。 りょう:・・・・・・ なつき:皆さんこんにちは!今日も始まりました、甘夏のスイートラジオ!今日はなんと、ゲストをお呼びしました! りょう:?! なつき:リア友のライス君です〜 りょう:ちょっ、どういうことだよなつk なつき:(咳払い)あ・ま・な・つ! りょう:あ、ごめん なつき:今日はこのライス君と一緒に声劇をやっていこうと思います。 りょう:声劇? なつき:あ、そっか。ライス君は初めてだから声劇わかんないか。声劇っていうのは、声だけで演じる劇のこと。君にわかりやすくいうと、ボイスドラマみたいなものかな。 りょう:状況掴めないんだけど?説明。 なつき:あー、ごめんごめん。これはラジオ配信ができるアプリなの。私、趣味でこうやって定期的に甘夏として配信してるんだ。みんなには内緒ね。 りょう:ラジオ配信?なんでそこに俺を呼んだわけ? なつき:リスナーさんに今の状況を説明すると、まあ・・・簡単にいうと、何にも知らないリア友に何にも説明せずに配信に巻き込みました(笑) りょう:巻き込みましたって・・・ なつき:あ、ライス、これがリスナーさんのコメントね。・・・わかってますよ、ハルさん。(リスナーに向けていうように)私めちゃくちゃなことしてますよね(苦笑気味に)でもね、彼本当に演技が上手いんですよ。一緒に声劇できる仲間増やしたいなって思ってたから、これは巻き込まなきゃなって!ってことでライス君、今日はすべこべ言わず、私に付き合ってね。

りょう:めちゃくちゃな・・・。俺の今の演技力知ってるだろ?後悔しても知らないからな。 なつき:はい、ライス君から了承を得たので、早速試しにやってみたいと思います。じゃあ、この前ハルさんからもらったあの台本やってみようかな。ライス、これ台本ね。ざっと見て。 りょう:・・・・おう 〈間〉 なつき:大丈夫そう? りょう:まあ一応 なつき:では、私とライスの声劇まで、3・2・1スタート。 りょう:『運命は、自分の手で切り開くものというけれど・・・』 〈声劇が終わる〉 なつき:ほら見て、コメント。『ライスさんうますぎじゃないですか?何者?』『配信者じゃないって本当?声劇主さんではないの?』『声優さんみたい!やばすぎる!!』・・・え、ちょっと、私に対してのコメントは?まあ、いいけど・・・そうでしょ?ライス君上手いでしょ?この子天才なんですよ!!で?ライス君。やってみての感想は? りょう:・・・思ってた以上に、楽しかった なつき:でしょ!!でしょ!!やっぱり君には声劇向いてると思ってたんだ!さっきの君、とっても生き生きしてたよ。もっと台本あるけど、やる? りょう:やる。 〈配信が終わって〉 なつき:ごめんねりょう。無理矢理巻き込んじゃって。 りょう:本当だよ。何してんの。

なつき:でも、楽しかったでしょ? りょう:まあ・・・楽しかったけどさ。 なつき:久々に見たよ、あんなに楽しそうに演技してるりょうの姿。私ずっと思ってたんだよね。りょうは声だけで演じるのに長けてるんじゃないかって。 りょう:え、なんで? なつき:なんて言うのかな。りょうの演技は、声だけでも感情をしっかりと人に伝えられる力がある。情景が目に浮かぶような演技なんだよね。セリフの強弱も気持ちの入れ方も上手いから。 りょう:俺が? なつき:気づいてなかったの?・・・まあ気づいてたらスランプになってないか。あのね、あんたは下手なんじゃないの。上手すぎて浮いちゃってただけ。だから、無理にあんたが自分の演技を変える必要はないのよ。多少は周りとのバランスも考えなきゃだけどね。私たちがあんたに追いつくべきなの。あんたは楽しく、自信を持って演技すればそれだけで人を惹きつけるの。自覚して!! りょう:ありがとう。でも・・・なつきは俺を元気付けたくて言ってんだろ? なつき:ああもう!!あんたのそういうネガティブなとこイライラする!!本気で思ってんの!!でも、自信のない時のあんたの演技は最悪!!だからもっと自分に誇りを持って!涼野さんも言ってたでしょ? りょう:いやだから、なんでお前が涼さんのこと知って・・・ なつき:りょうさ、このまま配信やってみな。ラジオとか、声劇とか。あんた本来喋るのも上手いんだから。やってみたら自分の魅力に気づけるはずだよ。私が言うよりそのほうが早い!! 〈後日、部室〉 たいち:で?結果は?どうだった? なつき:めちゃくちゃリスナーから好評でしたよ。やっぱり彼の演技はすごいです。 自分で気づいてないなんて本当もったいない。 たいち:だよなぁ。見てるとだんだんイライラしてくるくらいにな(笑) なつき:何言っても本気に受け取らないので、自分で配信してみろ!って課題を投げつけてきました。多分、今日初配信するんじゃないかな?・・・・あ、ほら部長言ってたらちょうど、りょうが配信開きましたよ。 りょう:・・・えーっと、皆さんこんにちは、初めまして。ライスと言います。(不安げに不慣れな感じ) たいち:っぷ(吹き出す)こいつ緊張しすぎじゃない?何回舞台たってきたんだよ なつき:いや、舞台と違いますもん。緊張しますよ。リスナーの顔見えないし、1人だし。でもまあ、りょうならすぐ慣れますよ。元々ラジオも好きですしね。 りょう:友達に勧められて配信を始めてみたのですがまだちょっと慣れなくて・・・ たいち:良い方に変わるきっかけになればいいな。 なつき:大丈夫ですよ、きっと。 〈2ヶ月後〉 りょう:皆さんこんばんは!(堂々となれた感じで)今週も始まりました。ライスステーション。今日は最初にちょっとした報告をしたいと思います。えー、実は昨日リアルの方で演劇部の公演があったんですよ。最近ずっと不調で、一時期は役を降りようとすら思っていたんですが、なんとか大成功を収めることができました!というのもこのアプリと、憧れのD Jと、そして何より1人の友人のおかげなんです。俺、このアプリを始める前は、何をやってもうまく行かなくて、自分に自信がなかったんです。失敗ばかりの負の連鎖。そんなとき、憧れのD Jが、自分を認めてあげられる何かを見つけなと、そうすれば自分を好きになれるし、自信を持てるように慣れる、そうアドバイスをくれたんです。そして、とある友人が、そのきっかけを見つけてくれました。俺を配信に巻き込んで、声劇の楽しさを、演じることの楽しさを、誰かに何かを伝えることの楽しさを実感させてくれた。だから俺は今、自分のことを好きになってきてる。公演が成功したのはそのおかげなんです。もちろん応援してくれるみんなのおかげでもある。だから感謝を伝えさせてください。いつもありがとう!これからも頑張っていくので、応援よろしくお願いします!

Fin.




キーワード:青春・5人・男3・女1・不問1・

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