『今は昔、竹取の翁という者ありけり……。』
私は、翁に拾われ……育てられた……名は『月夜(かぐや)』と名ずけられた。
翁と媼(おうな)に愛情をもらった。美しい羽織物もくださった。
私は、なんて幸せなのだろうと思った。けれど……そんな幸せは長くは続かない。
ある日、翁は数々の黄金を持ち帰ってきた。家が新しいお屋敷になった。
翁と媼は、身も心も変わってしまった。
翁は、私に『結婚の申し出』をしてきた5人の皇子を招いた。
媼(おうな)は嬉しそうだった。
……私の気持ちも知りもしないで…。
私は5人の皇子に、『無理難題』なお土産を持って来るように伝えた。
案の定、私に叶うものは居なかった。
それもそうだ。私が言った物は……【この世】には無いものなのだから……。
今宵は、月が綺麗に見えている。
もうすぐ、私はここから離れる……【我が家】に帰るのだ。
もう……私の穢れは綺麗に消え去った。もう、思い残すこともない。
別れの日…、私は翁と媼を殺した…いや、私は殺してない。
…もう終わった事…。迎えの牛車が来る。
翁から頂いた羽織物は、返り血で穢れているから……脱いでしまいましょう…。
さぁ、帰りましょう……我が家へ…。
【父も母】もいる、愛しい我が家へ……。
こうして、【鬼の姫】は【月夜】に照らされ帰っていった………。
Fin
キーワード:ファンタジー・シリアス・1人・女1
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