『君は…誰だい…?』
美しい灰色の髪に、真紅(しんく)の宝石のような瞳、色白の肌をした
唐服(からふく)の女性が橋の前に立っていた。
僕は、宮廷(きゅうてい)にある1本の大木(たいぼく)の近くで彼女を見つめた。
そんな僕を彼女は気付いたのか、僕を見つめ微笑む。
そんな時に、僕は君の名前を問いた。
彼女は、微笑みながら…
『私は、瑠花(るか)よ。貴方は?見たことない顔ね?』
そう言われた。
僕は、なにか言わないといけないと思って、
『君は綺麗だね。お嫁さんにしたいぐらいだ。』
つい、口走ってしまった。
彼女は、また微笑み…こう呟いた。
『ありがとう。そう言ってくれたのは貴女だけよ。』
そうこう話しているうちに、彼女は女官(にょかん)に呼ばれて…去っていった。
僕は、自分の名前を伝え忘れてしまった。
また会ったら、その時に自分の名前を伝えようと思った。
けどそれは叶わなかったんだ。
数日後、宮廷から出てきた彼女の姿は……まるで天女だった。
数人の兵士を連れて……火神(かしん)が居る山へと…登っていく…。
僕はその時初めて、彼女が【生贄】として嫁いで行ってしまうのだと気づいた……。
火神の住処(すみか)は、神聖(しんせい)な場所な為…【生贄】しか先を通ることは許されない。
彼女は、神聖な場所に入る前に僕に振り向いて……
『ごめんね』…僕にはそう聞こえた気がする。
あれから数百年間、僕は…結婚もせず…独り身で暮らしている。
『彼女は、瑠花は元気にしてるのだろうか……。もし、来世で生まれ変われるなら…今度は……君を……。』
…君を迎えに行くから。待っていてくれ。
Fin
キーワード:ファンタジー・シリアス・1人・男1・Natal
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