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『realize』作者:schön Ton(シェントン)

A→アンジュ

D→デビー


D語り:運命は自分の手で切り開くものと言うけれど、それは人間に限ってのことだと思う。

僕達の運命は、生まれた時から決められていて、その命は神の気まぐれ一つで簡単に消える。

例え、望まない運命だとしても受け入れるしかない。


A「なぁ、デビー」


D「なんだい?アンジュ」


A「どうしてお前はいつまで経っても悪魔なんだ?」


D「…君は何が言いたいの?」


D語り:神から授かった使命、それは天命である。僕達は一緒に生まれ、同じ時を過ごした。だけど、与えられた役割は正反対だった。

アンジュは天使、僕は……悪魔。僕達は、お互いがお互いの天命を羨み、変えることの出来ない運命にどうすることも出来ずにいた。


A「俺達はいつまで、望まない役割を演じ続けなきゃならない?

俺は、天使なんて柄じゃない。お前も、悪魔なんて柄じゃない。

それはお前が一番よくわかってんだろ?」


D「アンジュ、君はいつまでそんなことを言ってるの?神様は、僕達に一番適している役割を与えているんだ」


A「本気で言ってんのか?お前、悪魔がどんな存在かわかってる?」


A語り:天使と悪魔は常に対立している存在、一般的にはそう思われている。

しかし、それは人間の中での認識だ。天使と悪魔は、いわゆるビジネスパートナーだ。お互いが存在しないことにはその役割は成立しない。そして、その役割を任されるのは一人ずつ。

俺達の使命は前任の天使と悪魔がその役割を終える時に決まった。


それまで俺達は何者でもなく、これから決まる自分たちの運命にただただ期待を膨らませていた。


----回想----


D「僕達、天使と悪魔、どっちになるんだろうね?!ねぇ、君はどっちになりたい?」


A「お前さ、この話何回目だよ。どっちでも良くね?天使だろうが悪魔だろうがどうせ結果は一緒だろ」


D「全然違う‼︎たしかうにどっちも同じくらい大切な役割だよ?

だけど、役割は対極なんだよ!どっちがかけても成り立たないんだ‼︎」


A「はいはい、わかってるわかってる。でも、どっちがなるかなんて、だいたい予想はついてんだろ?」


D「どっちがどうなるかは神様のご意志だから、まだわからないさ」


A「そんなこと言って、お前、天使になりたいんだろ?」


D「え?あ、いや、僕は……僕はどっちだって、神様から貰った役割なら全力でこなすだけさ!」


A「お前が天使だよ、なんたってお前は神様からの信頼も熱いし、」


D「え?そーかなぁ。そんなことないさ(照)」


A「それに比べて俺は、別に人間が好きと言うわけでもないし、悪魔の方が性に合ってる。どうせなら人間に試練を与えるっていうもっともらしい理由つけて好き勝手に掻き乱して楽しめそうじゃん?」


D「君の考え方は良くないと思う。けどたしかに君は天使っていう柄じゃないだろうね」


D語り:その日は唐突にやってきた。僕達の運命が決まった日。アンジュにはどっちでもいいなんて言ったけど、実際、僕は当然自分が天使になるものだと思っていた。だから、だろうか?神様の言葉に一瞬、理解が追いつかなかった。


神「お前たちに使命を与える。それに伴い、名前を授けようと思う。まずは天使だ。天使は悪魔から与えられる試練に対して人間をサポートするのだ。その役目はお前に任せた。いいか、お前は今日からアンジュだ。」


A「……は?え?俺?」


D「………っ」


僕の期待は、一瞬で打ち砕かれた。


神「お前はデビー。悪魔だ。人間に試練を与えて成長を促す。時には闇への誘惑も必要となる。お前は優しいやつだ。だからこそお前にこの役目を与える。お前たち二人ならきっと先代よりも良い仕事をするだろう。」


D「……ありがとうございます……期待に添えるように…頑張ります……」


A「……」


----回想終わり----

A語り:俺達に与えられたのは予想とは全く反対の役割だった。俺はいい。どうせ適当にこなすから。けど、デビーは……


D「悪魔の役割……そんなの分かってる。悪魔は天使と協力して、人間の成長を促す存在だ。僕が彼らの弱さに付け込んで、試練を与える。天使の君は、人間がその試練を乗り越えるための手助けをする」


A「相変わらず綺麗ごとばっかだな。悪魔、それは人間を悪の道に誘う存在だよ。お前みたいないい子ちゃんに、その役目が務まると思ってんのか?……悪魔は俺にこそふさわしいんだよ」


D「……それは人間から見た悪魔の認識だろ?!神様はそんなことのために悪魔を作ったんじゃない。君がそんなんだから神様は君に悪魔の役割を与えなかった」


A「神様の意図なんてどっちでもいいんだよ。結果的に仕事が務まればいい」


D「君に悪魔を任せたらどうなる?君は全力で悪い事をする。それはもう見境なく、だ。

そうしたら僕は君を全力で止めきゃいけなくなる。それじゃあ試練どころじゃないだろ?僕達は、世界がよりよく回るように適切な役割を与えられているんだ」


A「お前、本当にそう思ってる?」


D「ああ」


A「嘘だ」


D「嘘じゃない!」


A「嘘だ!お前のそれは逃げだ。神様に与えられた?適切な役割?ふざけんな!

お前はそれを言い訳にして、本当にやりたいことから目を背けてるだけだ」


D「そんなんじゃない!僕は神様から与えられたこの役割に誇りを持っている!」


A「お前さ、自分が仕事してる時の顔、見たことあんのか?誰かを傷つけて、自分も傷ついた顔して、そんなんで……そんなんで本当に誇りを持ってるなんて言えんのかよ!!」


D「……っ」


A:俺は、ただただ腹立たしかった。運命だから、とか、使命だからとか、そんな風にもっともらしい理由を付けて自分の感情を押し殺してる目の前の悪魔を見ていると無性にイライラする。


A「さらけ出せよ、てめえの欲望を。お前、悪魔なんだろ?言ってみろよ」


D「……ない」


A「ああ?」


D「悪魔なんてやりたくない!!人を傷つけることなんてしたくない!!!僕は、天使になりたかった!!」


A「ああ」


D「君が羨ましい、なんで、なんで僕が天使じゃないんだ?!なんで君みたいなやつが天使なんだ!!!!!」


A「それがお前の本音か。だったら、俺から奪ってみろよ、天使の座を」


D「そんな簡単な話じゃない!!君だってわかってるだろ、そんな事したら、僕達は、存在すら許されない。神の意志に背くことになる」


A「怖いのか?」


D「消えてしまったら、何にもできなくなる!!それじゃあ意味がないだろ?!」


A「俺は、怖くない。それくらい覚悟はできてる。満足できない今を生きるよりも、博打打って、自分の欲しいもん手に入れるためにもがいてた方がいい。何かを失う覚悟もなくて、何かを手に入れられると思うな!!!!」


D「……」


D:アンジュの言う通りだ。僕は今まで役割を盾にして自分の本当の気持ちから目を背けてきていた。逃げてきたんだ。それに比べてアンジュはどうだ?言い訳なんて一切せずに、自分の気持ちに正直に向き合っている。


A「俺と取引しろ悪魔。命がけの取引だ。」


D「とり…引き?」


A「内緒で入れ替わるんだ。俺達ならそれができる」


D「……もし……バレたら?」


A「バレたら消えることになる。でも、上手くいけば俺達は、本当にやりたいことをできる。自分達で切り拓くんだ」


D「出来るかな」


A「出来るだろ。だって俺達だぜ?今までだって二人でやってきたんだ。本当にやりたいことやったら、もっとすごい事ができるに決まってる」


D:自分に出来るだろうか、乗り越えることが……もしできるのならば僕は、きっと、もっと自信を持って輝けるだろう。


D「アンジュ、悪魔と取引することがどういうことか分かってるんだろうね?」


A「もちろん。覚悟はできてるって、言ってんだろ?……そういうお前も、覚悟、できたみてぇだな」


D「あぁ、もう自分の気持ちから逃げたりしない」


A「いい目してんじゃん、昔のお前みたいだわ」


D「昔の僕?」


A「自分の役目に期待膨らませる純粋な子ども」


D「こ、子どもって!」


A「僕は悪魔、君は天使。それが一番適してる役割なんだって、神様に教えよう!(デビーの口調を真似てデビー風に)」


D「……‼︎あぁ、手に入れるぞ、俺達二人で、本当になりたい自分を(アンジュの意図を汲み取ってアンジュ風に)」


A「切り拓こうぜ」


D「‘‘俺達‘‘で」


終わり



キーワード:ファンタジー・3人・不問3・schön Ton・シェントン

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