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『Lady`s dream』作者:schön Ton

【登場人物】


オリビア・・・貴族のお嬢様。元々は平民の娘であり、コツコツと真面目に働いて暮らしていたが、父親が事業を成功させたことにより突然貴族の娘になる。


エドワード・・・オリビアの専属執事。仕事は常に完璧でとても優雅にこなす。


父・・・オリビアの父。学者として資源となる石などを研究していたが、ある日研究が、思わぬ成果を得て伯爵としての爵位を得る。


【story】


コンコン(ノック音)


エ:「失礼します。お嬢様。お茶の時間でございます」


オ:「あーーー!!!退屈退屈退屈ぅぅぅぅ!!!」


エ:「お嬢様。どうされましたか?」


オN:突然の声に、特に驚く様子もなく、執事はいつものように平然と部屋に入ってくる。


オ:「どうしたもこうしたもないわ!!毎日毎日、特にすることもなく同じことの繰り返し。本当に嫌気が差すわ!!」


エ:「では、本日は気分を変えて、お庭でティータイムといたしましょうか?」


オ:「そういう問題じゃないの!暇なの!こんなダラダラとした生活、お嬢様なんて私には性に合わないのよ」


エ:「そう言われましても・・・こればっかりは慣れていただくしか」


オ:「慣れるわけないじゃない。私は貴族じゃないの!!そこら辺にいる平民の娘なのよ」


エ:「今は違います。あなたは、天才的研究で貴重な資源を発掘し、新たな事業を産んだクラーク伯爵のお嬢様、クラーク家の御令嬢なのですから」


オN:そう、私は少し前までどこにでもいる町娘であった。毎日出稼ぎに行き、帰ってくると家のことをする。父は学者として様々な資源の研究をしていた。特別貧しくもなく、特別裕福でもない。真面目にコツコツと働いていれば、それなりにまともな生活を送れる、そんな環境で暮らしていたのだ。そんな私が、どうして今、こんな風にお嬢様と呼ばれ、執事なんていう大層な存在をそばに置いているのか。


それは数ヶ月前のことだ。長年続けてきた父の研究が突然成果をあげ、世の中に大きな影響をもたらした。それは莫大な資産となり、父は街の学者からたちまち伯爵へと爵位を得ることとなる。それに伴って、私も『町娘オリビア』から『クラーク令嬢』となった。生活は一変し、毎日出稼ぎに出る必要など当然なくなり、忙しく質素な生活を送っていた私は、急に退屈で無駄に優雅な日常へと放り投げられたのだ。


オ:「こんな生活、私には耐えられないわ。私はゆったりとお茶を飲む時間よりも、忙しく汗を流しながら働いている時間の方が大好きなの」


エ:「・・・」


オ:「お父さんもお父さんだわ。研究が身を結んだのは確かに喜ばしいことだし、爵位を頂いたのはとても凄いことだけど、だからと言って、こんな風に生活をガラリと変える必要なんてなかったのに・・・お父さんは今までの生活が嫌いだったのかしら・・・」


エ:「お嬢様、そんなことはございません」


オ:「いいえ!そんなことある!!きっと不満だったんだわ」


エ:「オリビアお嬢様、旦那様には旦那様なりのお考えがあるのです」


オ:「考え?エドワード、あなたがお父さまの何を知ってるっていうのよ!!」


エ:「はぁ、仕方ありません。本当は旦那様には口止めされていたのですが、お話しいたしましょう」


オ:「口止め?」


エ:「はい。オリビアお嬢様、旦那様が今の生活をお選びになったのは、決して以前の生活に不満があったからでも、ましてや嫌いだったからでもありません。旦那様はむしろ、お嬢様と二人、穏やかに支え合いながら生きる生活に幸せを感じていたとおっしゃっています」


オ:「だったらどうして・・・」


エ:「旦那様はただ、お嬢様に幸せに暮らして欲しかっただけなのです。年頃の娘にせっせと働くことを強いてしまい、好きなことを何一つさせてやれていなかったと、そう悔やんでいられたのです。だから、研究が成功した今、お嬢様には目一杯好きなことをして幸せに暮らしてほしい。それが旦那様の一番の想いなのです」


オ:「お父さんがそんなことを・・・。でも、私とっての幸せはあの家に、あの暮らしにあったのよ。お父さんには申し訳ないけど、こんな風に無駄な時間がただ流れているだけの生活、幸せとは思えないの」


エ:「失礼ながら申し上げます。今が無駄な時間と感じられるのは、お嬢様自身がそうしてしまっているからではないですか?」


オ:「というと?」


エ:「確かに生活は豊かになり、お金の心配もいらない。今までみたいに、汗水垂らして働く必要は無くなったかもしれません。身の回りのことも私達使用人がいたします。でも、それは決して何もしてはいけないということではございません。」


オ:「それはそうだけど・・・」


エ:「無限にある時間、莫大な資産、それらがお嬢様にもたらすのは、贅沢でも退屈でもありません。できることの可能性を増やしてくれるものではないでしょうか?使い方はお嬢様次第なのです」


オ:「・・・」


エ:「旦那様がお嬢様にお与えになりたかったのは、そういうものなのです。思い出してください。あなたの夢はなんですか?やりたいことはないのですか?」


オ:「あっ・・・・」


オN:私のやりたいこと・・・。


➖➖➖➖回想➖➖➖➖


オ:「ねえねえお父さん!」


父:「なんだいオリビア」


オ:「お父さんの研究は、キラキラな綺麗な石もいっぱい見つかるんでしょ?」


父:「ああ、そうだね、宝石の原石なんかもいっぱい見つかるよ」


オ:「オリビアね、大きくなったら、お父さんの見つけた宝石で素敵なアクセサリーを作りたい!!」


父:「ほう、オリビアはアクセサリーが欲しいのか」


オ:「ううん、違うの。欲しいんじゃなくて、作りたいの!そしてね、お店を開くの!たくさんの女の子がお父さんの見つけた宝石で幸せに慣れたら最高だなぁって!!」


父:「!!オリビア・・・そうだね、素敵だ、とっても素敵な夢だね」


オ:「でしょでしょ!!」


父:「それなら父さんはもっともっと頑張って、いっぱい宝石を見つけなくちゃなぁ」


➖➖➖➖➖➖➖


オN:お父さん・・・あのこと覚えてたんだ。


オ:「ねえ、エドワード」


エ:「はい、なんでございましょうか。お嬢様」


オ:「やっぱり今日のお茶はお庭でいただくわ」


エ:「かしこまりました」


オ:「それから」


エ:「はい」


オ:「私、家庭教師を雇いたいわ」


エ:「家庭教師、でございますか」


オ:「ええ。貴族としての教養と、そして、色んな知識を学びたいの」


エ:「ふむ、知識ですか。どのような?」


オ:「お店を立ち上げたいのよ。そのために必要な、経営の知識や役立つものを片っぱしから学ぶの!私、勉強なんて全くしてこなかったから」


エ:「かしこまりました。手配いたしましょう」


オ:「ありがとう」


エ:「・・・差し支えなければお聞きしてもよろしいでしょうか」


オ:「ええ、いいわよ」


エ:「一体なんのお店を?」


オ:「世界一美しい宝石の並ぶお店」


エ:「・・・とても素敵なお店でございます。オリビアお嬢様」


エN:日常というのは、どんなふうにも変えることができる。自分次第で無限大な可能性が生まれてくる。つまらないとそこで座り込んだりせず、少し視点を変えて、一歩を踏み出せば、新しい世界が広がっていくのだろう。これは、彼女が新しい一歩を踏み出す、始まりの物語。


Fin


キーワード:ファンタジー・3人・男2・女1

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