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『渦巻く荒波の⾏先は』作者:痔・エンド

【登場⼈物】 泰良(たいら)男 指名⼿配犯....劣悪な環境で今⽇まで育ち⽣き抜いてきた。⾃分なりの正義を持っている。⽣きることに必死 亮⼆(りょうじ)男 警察.......⻑年泰良を追って捜査を⾏っている 桜義(さくらぎ)男⼥どちらも可 警察.......亮⼆の相棒、同じく⻑年泰良を追っている 秀太(しゅうた)男 少年.....親の虐待から偶然泰良の元へ逃げ込んだ少年 加藤(かとう)男 近所の農家.......優しく、お⼈好しな農家のおっさん モブ♂♀ 回想シーンなど.......基本ギャラリー的な感覚なので配役は重要ではない ________________________________ 「始まり」 泰良【ナレーション】 春の⽇差しが照り続け、⿃のさえずりが⼼地よい⾳⾊を奏でる。 桜が咲き始め新たな物語を告げるかのようだ...... 世間的には始まりの春というのだろうか? めでたい季節....なんだろうなしかし俺には関係ない、めでたい?旅⽴ち? そんな響きは知らない。死の瀬⼾際、⾜掻く、とかなら毎⽇聞く、いや、使ってるかもしれねぇな。 【回想シーン】 タイトルコール【渦巻く荒波の⾏先は】 泰良 「はぁ.....はぁ......ご苦労だったな。」 モブ♂ 「お、おまえ.....クソッ.......」 泰良 「ハッ!騙されたテメェの末路さ!.......悪ぃな俺は⽣きるために必死なんだよ。」 【回想シーン終わり】 亮⼆ 「はあ…これで今年はもう四件⽬か.....泰良、通称︰蜘蛛、奴は気がつくと姿を現し事件と事件の狭間に網を張る。今回も暴⼒団同⼠の派閥で争いかと思ったが結局は奴が張った網に暴⼒団がかかっただけ…か。 今回も収穫は無し、上層部もいい加減俺らに担当を変われと…俺たち以上にヤツに詳しい人はいないってのに。」 桜義 「亮⼆さんアイツは何が狙いなんでしょうね.......」 亮⼆ 「さぁな.....奴が関わる事件は悪党が被害に遭うな。結果的には悪党が壊滅することもあるが結局奴は何がしたいのかは俺も分からない。ただ⾔えることは死⼈が出ている以上奴は正しい者ではない。あと、うるせぇ上層部をさっさと黙らせたい。」 桜義 「そうですよね。善良な市⺠が襲われる前に捕まえたいですね。上層部は…まあそうですね。」 亮⼆ 「あぁ、ところで桜義。奴を捕まえるために俺の考察があってだな。」 桜義 「何かあったんですか?」 亮⼆ 「実はな、とある夫婦から息⼦が⾏⽅不明になったと通報を受けた。」 桜義 「ほぉ。それと泰良がなんの関係が?」 亮⼆ 「この間の暴⼒団の組員が死んだ事件の⽇付、死亡推定時間、場所とその⼦どもが居なくなった時間、場所もほぼ同じなのだよ。」 桜義 「なるほど....確かにそれは無関係とは⾔えなそうですね。」 亮⼆ 「そこで今回の⼦ども捜索は俺達が引き受けた。いいな?」 桜義 「えぇ構いませんよ。どちらにせよ⼦どもの⾏⽅も⼼配ですし。」 亮⼆ 「よし、じゃあ聞き込みから開始しようか。」


【場面変わる】 泰良 「おいガキてめぇが来るところじゃねぇ帰れ。」 秀太 「嫌だ帰らない!」 泰良 「あ?何⾔ってやがる。」 秀太 「帰りたくないんだ。」 泰良 「いいから帰れ!お前には普通の暮らしがあるだろ?俺とは違うんだ。」 秀太 「嫌だ!!!」 泰良 「あ?.......」 秀太 「お⽗さんも、お⺟さんも虐待してくるんだ.....僕は学校でも虐められて.......帰るところ、居場所なんてどこにも無い.......」 泰良 「だからなんだ?俺とお前になんの関係がある。」 秀太 「おじさん蜘蛛って⾔われてる指名⼿配犯だよね?テレビで⾒た事あるんだ。」 泰良 「あぁ。世間ではそう⾔うらしいな。」 秀太 「でもおじさんは僕を襲わない。」 泰良 「何が⾔いてぇ?」 秀太 「おじさんは僕みたいに何かあるんじゃないの?理由がきっと。」 泰良 「はっ!ガキのくせに何わかった気でいる?早く帰れ。」 秀太 「…っ!僕を強くして欲しい!」 泰良 「は?」 秀太 「1⼈で⽣きる⼒が欲しい!テレビでやってた!おじさんは1⼈でずっと⽣きてるって.....」 泰良 「はぁ.....あのな?よーく聞けガキ!テメェは普通の暮らしができる⼈間なんだ俺達の世界へ来るな今すぐ帰れ!」 秀太 「僕は帰らないここにいる!こ、これでもか!」 銃を⼿にもつ秀太....... 泰良 「ガキがいっちょ前に銃なんざ構えて?何が出来る!ほら撃ってみろよ!さあさあさあ!」 秀太 「うっ、うっうわぁぁぁあ!」 ダァァン!乾いた銃声が響く 泰良 「ほら、な、?当たらねぇ......テメェにはできねぇんだよ、いいかガキ!本気で⽣き抜く意思があるやつにしかこれは撃てねぇ、覚悟が無きゃ人には当てれねえんだよ!」 秀太 「うっ.......ひっ。」 泰良 「オラ、⾷っちまうぞおおおお!」 秀太 「うわぁぁぁあ!」 泰良 「ようやく出ていったか.....俺のガキが⽣きてりゃあれぐらいか?あぁ嫌なこと思い出しちまったな。」 【回想シーン】 モブ♀ 「父さんも自殺して…あんたなんて産まなきゃ良かった!」 モブ♂ 「やーいやーい!お前の⺟さん⾸吊ったんだろ?」


モブ♂

「どうしてあの⼦はあんなに汚れてるの?」


モブ♀

「⾒ちゃダメよ!あんな汚い子!」


【回想シーン終わり】


泰良

「親⽗が多額の借⾦を背負って⾃殺して、お袋が精神的病(やまい)にかかって、⾸吊って、俺は⼩学校すら通えなかったっけ?」

.

【回想シーン】


モブ♂

「少年どうしたこんな所で.......ほぅそうか?⽣きる⼒を与えてやろう。」


モブ♂

「よくやった!これで⼤⾦持ちだ!.......(バカめさっさとここを出て⾏ってやる。)」


モブ♂

「君が泰良君だね署まで来てもらおう。」


【回想シーン終わり】


泰良

「信じるやつは裏切る、俺は利⽤だけされて⽣きてきた。今度は俺が搾取をしてやる。」


【回想シーン】


モブ♀

「そんなあなたでも愛しちゃダメなの?」


モブ♀

「あなたと⼀緒にいられて幸せ.......」


モブ♂

「あ?⼥は関係ないだ?知らねぇな!⾦を持ってこい⼥は預かるぞ!」


【回想シーン終わり】


泰良

「俺は、⾦が必要だったんだ。あの子を助けるには.......」





【回想シーン】


モブ♂

「あ?⼥ァ?あぁ。殺してやったよ!ピーピーうるせぇからよぉ。

腹に⼦どもも居たらしいけどよ、知らねえなあ?元々テメェの親⽗が借⾦背負ったのが悪ぃよなぁ!恨むなら無能な親父を恨めよなぁ!」


モブ♂

「おら死体は返してやるからよ!⾦と交換だなぁ?」


モブ

「お、おぃやめろ!やめろおおぉ!お前ッ!俺たちに喧嘩売るってのはどういうことか分かって.......ぐぁぁぁぁぁ!」


【回想シーン終わり】


泰良

「全部だ悪党が居るから奪われるんだ、俺が弱いから全部失うんだ.......

あぁそうだ全部壊そう、殺そう。俺が⽣きるために。」


…ハッ!

いつの間にか寝ていたのか?.......


秀太

「おじさん?」


泰良

「あ?なんでてめぇがここに居る。」


秀太

「警察が近くを歩いてて.......おじさんが危ないって思って、戻ってきた。

そしたらおじさんがちょうど起きたの。」


泰良

「なんだと?.....今の話は本当か?」


秀太

「うん!パトカー止まってたから間違いないと思う。」


泰良

「ガキ....まさかお前に救われるとはな。この隠れ家はもう使えねぇ俺はさっさとここを出る。」


泰良(⼼の声)

(荷物をさっさとまとめよう。この空き家には数年居たがこの拠点は⻑持ちした⽅だろう。)


荷物をまとめていると1つの写真が落ちてきた。

(彩⾹(さいか).......殺された、俺の妻になるはずだった⼥だ....

信じたものは裏切る、愛したものは奪われる、俺は借⾦取りの輩を殺しちまった。

もう避けては通れない。奴らは俺を常に追っている。初めからあんな奴らが居なければ親⽗もお袋も⽣きていたのか?.......俺の⼼は冷たいままだ。ここのコンクリート床のようにな。)


.......


泰良

「荷物はまとまった。俺は出ていく!ガキお前もさっさと逃げろ、ろくな事にならねぇぞ。」


秀太

「う、うん。」


泰良

「あぁ名前を聞いとこう。おいガキ、名はなんていう?」


秀太

「しゅう.......た、しゅうた。」


泰良

「はぁ.....まさかな.......」


秀太

「どうしたの?」


泰良

「いや、俺の⽣まれてくるはずだった⼦どもは男の⼦。名前はしゅうたにする予定だったんだ。」


.......


泰良(⼼の声)

(今思えばなぜ俺は声掛けたのだろうか。居場所のないガキが昔の俺に写って⾒えたのか?

秀太.......という名に俺は巡り合わせを感じたのか?俺にはまだ善良なこころがあったのか?わからない。)


.......


泰良

「なぁ、ガキ。俺と来るか?」


秀太

「え.......?いいの?」


泰良

「ガキ歳はいくつだ。」


秀太

「8歳.......」


泰良

「8?.......⼩学2年くらいか?」


秀太

「うん......」


泰良

「10歳までだお前の⾯倒を⾒てやる。」


秀太

「おじさん!いいの?」


泰良

「泰良だ、たいら」


秀太

「た、たいらさん!よろしくお願いします!」


泰良

「あぁ。」


【場面変わる】


亮⼆

「1歩遅かったか.......」


桜義

「そうみたいですねもうここは、もぬけの殻ですね。」


亮⼆

「チッ!…」


桜義

「亮⼆さん悔しい気持ちはわかります。しかし1歩前進じゃないですか?聞き込みで少年が歩いていた区域に蜘蛛の隠れ家もあったわけですし。」


亮⼆

「あぁそうだな少年も姿がこの辺りで⾒えなくなったそうだな。無関係とはこれで⾔えまい。」


桜義

「えぇ。これからは並⾏して捜索することになりそうですね。」


亮⼆

「あぁ、まず情報が少ない⼦どもは誘拐されたと⾒ていいだろう。」


桜義

「亮⼆さん!⼀刻も早く⾒つけてあげましょう!」

泰良【ナレーション】

あれからどれくらい時間がたっただろうか?

⼦どもは成⻑が早い、柿の⽊は成るのに8年はかかるそうだ。

それとは違い⽵はピーク時1⽇で1メートル伸びることもあるらしい。

⼦どもが⽵なら俺は柿の⽊と⾔った所だろうか?.......


【場面変わる】


秀太

「親⽗!ただいま!」


泰良

「おう。今⽇はどうだった。」


秀太

「まずまず.......かな?まぁ楽しかったよ!それと親父!だいぶ慣れたよこの⽣活も。」


泰良

「そりゃあそうだ2年近くここに居るんだ。」


秀太

「親⽗のおかげでちゃんと⽣活もできて友達もできた!」


泰良

「ならいい。流⽯は⽥舎の学校だ.......⾝元不明でも案外簡単に通えるもんだな。」



秀太

「そうだね.......親⽗にばっか苦労かけて申し訳ないな.......」


泰良

「いい。お前は普通の暮らしをしろ。」


秀太

「で、でも。」


泰良

「⾔っただろう。お前はいつでも普通に戻れるんだ。」


秀太

「う、うん。」


泰良

「あれから2年近く.....か?暴⼒団の奴らに⽴ち向かってた俺だが、今はしっぽ巻くように⾝を潜めているからか、警察も暴⼒団も全く無縁になったもんだ。」



秀太

「まさか親⽗が普通に働くなんて思わなかったよ!」


泰良

「⼈⼿になりゃ誰でもいいんだろ?偽装してんのは申し訳ねぇがなぁ…

この辺のあんちゃん達も良くしてくれるから働き甲斐はあるぜ?」


秀太

「そうだね!」


泰良

「ちょっと俺⽤事あるからよ秀太飯作っててもらっていいか。」


秀太

「お、おう!分かった!」


【場面変わる】

泰良

「ふぅ.....⽇中は暖けぇが⼣⽅からは冷えるもんだ。お、いたいた!おーい!」


加藤

「おう!たいきさん!」


※この近辺では偽名


泰良

「どーも!加藤さん!すいませんねこんな所きてもらって。」


加藤

「いやいや、いいんすよどうしたんすかいきなり話しなんて?」


泰良

「いや折り⼊って⼤事な話があってな…加藤さんにしか話せねぇんだ。」


加藤

「お、おうたいきさんど、どうしたんでぇ。」


泰良

「加藤さん。巷で噂だった蜘蛛って知ってるかい?」


加藤

「あぁ。知ってるさそりゃあ!有名だもの!」


泰良

「その蜘蛛が⾎の繋がりもねぇガキを連れて匿ってる話もか?」


加藤

「あぁ!テレビでやってたなぁ。何やら両親は虐待してるとんでもねぇ親だったな。」

泰良

「そうだったな。」


加藤

「だからよぉ!その蜘蛛って奴を俺はテッキリ悪党なんだと最初は思ってたんだな!

しかしな俺の勘がこう⾔ってる。蜘蛛のやつはなにか裏がある、1⼈で何かと戦ってるってな!」


泰良

「ほう?」


加藤

「虐待されてる⼦どもを放っておけず匿ってる悪党なんざ聞いた事ねぇ!

元々⼈の命を奪ったとはいえ暴⼒団しか被害者はいねぇんだ。

もしかするとあの蜘蛛はダークヒーローみたいなもんじゃねぇかと俺は思ってんだ!」


泰良

「随分考察してるようで.......」


加藤

「おおっといけねぇ!それでその蜘蛛がどうしたんでぇ。」


泰良

「俺なんだ、俺が蜘蛛なんだ」


加藤

「ま~~~~~た変なことを⾔うんだから、たいきさんはよぉ!」


泰良

「ほらこれが証拠だ。」


加藤

「ッ!その腕の傷.......まさか!ほんとにあんたがあの蜘蛛なのか?」


泰良

「あぁそうだ。感謝してる。加藤さんとこの地域の⼈達には.......」


加藤

「お、おめぇさんなんでいきなりこの話をしたんだ!?」


泰良

「まぁ経緯を聞いてくれよ加藤さん。」


加藤

「わ、わかった!」


泰良【ナレーション】

俺の経緯から2年前何があったのか秀太は⼀体どんな⼦なのか多くのことを加藤さんに俺は話した。


加藤さんはそうか.......と⼀⾔⾔うと


加藤「分かった!秀太くんのことは俺に任せろ!」


何も俺には聞かず答えてくれた。


【場面変わる】


秀太

「親⽗おせぇなぁ〜ちょっと探してみるか!」


秀太

「おぉーーい親⽗!親⽗!.......?何してんだあんな所で。」


秀太

「親⽗!ご飯冷えちまうぞ!早く来いよ!」


泰良

「あぁすまない今戻るよ。」


加藤

「⻑話しちまったな!たいきさん、んじゃあな!」


【場面変わる】


泰良

「ご馳⾛様でした!」


秀太

「おう!美味かったか親⽗?」


泰良「あぁ美味かったぞありがとうな秀太。」


秀太

「へへっ!だろお?伊達に加藤さんから料理教わってないぜ〜」


【回想シーン】


秀太【ナレーション】

俺たちの幸せは⻑く続くと思ってたんだ.......


秀太

「おはよう〜?あれ?親⽗居ねぇや朝早くから出かけたのかな?」


何か変な空気を感じ取った。


嫌な予感がしたんだ…

やっぱりおかしい…あれから数⽇親⽗の姿を⾒ない。

その代わり加藤さんが毎⽇夜ご飯を作りに来てくれる。

親父。どこ⾏っちまったんだろうな?


秀太

「なぁ加藤さん親⽗は?」


加藤

「さぁな?なんか出張がどーのとか⾔ってたぞ?」


秀太

「そうなの?でも、俺に何も⾔わないなんておかしいよな?」


加藤

「まぁ急いでたんだろ?たいきさんが長く留守なら暫くは俺の家来いよ?秀太くん。」


秀太

「う、うんわかった!言葉に甘えて…暫くお世話なろうかな。」


秀太【ナレーション】

俺は忘れてたんだ。親⽗とは⼀緒にいるのは10歳までだって。

親⽗は俺に居場所を残してそのまま元の世界に帰っちまった。

バカヤロウ.......ありがとうも⾔わせてくれねぇなんてよ.......

なんで何も⾔ってくれなかっんだ.......


【場面変わり】


桜義

「蜘蛛の事件が途絶えてから早2年になりますね。」


亮⼆

「そうだな.......あの⽇を境に⼦どもも蜘蛛の話も聞かなくなった。本当にあの⼆⼈は死んだのか?」


桜義

「わかりません.......上層部はそのように処理していますが。」


亮⼆

「ありえないだろ?あんな巧妙に隠れて、事件を起こしていた奴が今更野垂れ死ぬなんてことするか?」


桜義

「そうですよね.......ただ気になるのが蜘蛛と因縁ある暴⼒団が最近動き出したことですよね?」


亮⼆

「あぁそうだな.......何かあるかもしれないな。」



【場面変わり】


泰良(心の声)

いつかは⾒つかると思ったがまさかこんな早いとはな.......

⼦どもを⼈質にされたくなければお前が⾃ら来い.......か蹴りをつけよう俺の⼈⽣全てに。


【場面変わり】


加藤

「おーーい秀太〜ご飯できたぞ〜。んぁ?どうした正座なんかして。」


秀太

「加藤さん、俺さっきのニュースで⾒たんだ暴⼒団が動き出したって.......」


加藤

「ッ.......」


秀太

「ピンときたんだ。親⽗、⾏ったんだろアイツらのとこに。」


加藤

「はぁ.......しょうがねぇな隠しても。

たいきさん、いや泰良さんは向かったよ秀太くんを守るために。」


秀太

「俺⾏く。親⽗の所へ。」


加藤

「は?何を⾔って?」


秀太

「加藤さん頼む!俺を親⽗の元へ⾏かせてくれ!」


加藤

「…わかったよ。かなわねぇなぁ2⼈には......⾏ってこい!」


秀太

「ありがとう!加藤さん!俺、⾏ってくる!」


急いで飛び出す秀太


加藤

「.......これでよかったんだよな泰良さん?俺にゃあの⼦の真っ直ぐな目⽌められねぇよ。」





秀太

「はぁはぁ…!早く⾏かねぇと親⽗があぶねぇ!待ってろよ親⽗ィ!」


クラクションが鳴る


加藤

「おぉーいちょっと待て!ええっとだなあ?そのぉ乗ってくか?」


秀太

「加藤さん.......!」


【場面変わり】


泰良

「罠だろうとは思ったが、サシで蹴りつけようって⾔ったのはどこのどいつだよ?.......」


モブ♂

「悪いな.......蜘蛛。いや泰良、お前は俺たちを舐めすぎたんだ。

終わりにしようやこれで?1⼈で勝てるのか俺たちに。」


泰良

「はぁ.......分かってないなお前たちは何も。」


拳が⼀閃する吹き⾶ばされる組員。動揺する者達。

泰良

「あのなぁ?俺は弱いからコソコソやってたんじゃない。

⾦が欲しいから、⽣きるために必死だったんだよ。」


モブ♂

「か、関係ねぇ、やれ!いけぇお前ら!」


【場面変わり】


亮⼆

「やはり抗争になったか…もっとスピード出すぞ桜義。」


桜義

「わかりました亮⼆さん!」


亮⼆

「死ぬなよ蜘蛛…俺はお前の真意を知りたい!」


桜義

「⼦どもも無事⾒つかるでしょうか?」



亮⼆

「わからない。しかし⾔えることは俺たちの⻑い捜査もこれでケリが着くかもしれねぇってことだ。」


桜義

「そうですね.......亮⼆さん怖くないんですか?」

亮⼆

「あ?怖ぇよ死にたくねぇし。俺お国の為に!みたいな柄じゃねえし。

うめぇ飯くえりゃそれでいいんだよ。」


桜義

「意外とそこは素直なんすね。亮二さんは正義に熱いのか自分主義なのかわかんないですよ。」


亮⼆

「あ?そーだなぁ、かっこいいと思ったことが正義だわ。署のヤツらが⼤勢で来るのも時間の問題だ。

俺達が単独で勝⼿に動いたことはどうせあとで上層部に問い詰められる。さっさとカタつけねぇとなぁ。」


桜義

「そんなに蜘蛛が気になるんですか?」


亮⼆

「あぁ何かあるだろうとずっと睨んでたからな。」


桜義

「不思議っすね亮⼆さんは。」


亮二

「何がだよ?俺はただ上層部黙らせたいだけだ。」


【場面変わり】


泰良

「ハァハァ.......この数はキチィか.......」


モブ♂

「さっさとくたばれ泰良ァ!お前はもう終わりなんだよ!」


泰良

「くたばれねぇよ、なぁ秀太?.......」


ウオオオオオオオオオ!


(こんな事ならガキに情なんて持つんじゃなかったな.......

俺はァ1⼈で静かにしてりゃ良かったんだ.......)


グフッガハッ

(なんで俺はあんなやつを助けた?あんなクソガキを.......)

オオオオオァァァァ!


(昔の俺も誰かに助けて欲しかったんだろうな.......

過去の忘れ物を取り戻したかったのか?.......分からねぇ。)


ハァハァ.......意識が.......朦朧(もうろう)としてきた.......


亮⼆

「泰良!泰良!」


俺を呼ぶ声がする.......

幻覚まで⾒えてきたか.......


亮⼆

「オラァ!」


モブ♂

「うぎゃあ。」


亮⼆

「お前が泰良か?」


泰良

「お?なんだ、あんたは.......」


亮⼆

「話は後だ、戦況は?」


泰良

「劣勢.......だな。」


亮⼆

「暴れていいぞ桜義。」


桜義

「承知!亮⼆さん!指⽰遅いっすよ!」


モブ♂

「なんだコイツらクソつえぇぞ!」


泰良

「ココは任せていいか?」


亮⼆

「あぁ無問題(モーマンタイ)だ。」




泰良

「ハァハァ.......お前がボスだなテメェ潰せば勝⼿に解体するよなぁこんな団体。」


モブ♂

「黙って⾒学させてもらってたがあぐらはかいていれないようだな。

あぁかかってこい泰良。」


泰良【ナレーション】

拳が交差する

何度ぶん殴られたか.......正直数えたくねぇ。

あぁ疲れた眠りてぇ。帰りてぇ。あぁ〜帰るところないっけ?はぁ秀太は元気にやってるかな?

アイツにもっと優しくしてやりゃ良かったな…。



泰良

「グフッ.......」


モブ♂

「惜しかったな.......さよならだ泰良.......」


秀太

「危ねぇ!!」


パァン!乾いた銃声が響く

モブ♂

「ぐぁぁぁぁぁ.......俺の肩がァァ」


秀太

「ヒュウ危機一髪.......あーあ俺もやっちまった。」


泰良

「秀太.......お前?なんでここに.......」


秀太

「なんでって?俺が親⽗の⼦だからだよ。それ以外に理由がいるかよ?」


泰良

「ヘッ、ははっそ、そうか.......」


秀太

「アイツトドメ刺していい?」


泰良

「え、おまえ」


モブ♂

「ゴァァァァァ!」


ゴキゴキゴキゴキィ鈍い音が響く


泰良

「秀太いつの間にあんな組技覚えたんだ.......」


秀太

「いっちょ上がりぃ。」


泰良

「秀太.......また助けられたな。」


秀太

「いやいつも助けられてるのは俺の⽅だよ。」


泰良

「お前よく引き⾦ひけたな.......」


秀太

「覚悟がないやつには出来ねぇだっけ?初めて出会った時親⽗に⾔われたことだよ。

あの時の俺は⾃分すら守れなかった。

今は親⽗を守りたいその⼀⼼だったからさ人一倍強い覚悟があったのかもな。」


泰良

「カッコよくなっちまって.......へへ。」


モブ♂

「く、くそぉせめてこのガキだけでも殺してやっ」


泰良

「ッ!秀太!あぶねえ!」


秀太

「なっ!」


加藤

「加藤パァァァンチ!」


モブ

「ゴッフェ.......」


加藤

「お、俺だってやるときゃやるんだぞぉ!?」


秀太

「やるじゃん加藤さん。」


泰良

「⾜はガクガクだけどな。」



桜義

「そっちも⽚づいたみたいですね。」

亮⼆

「みたいだな。」


泰良

「世話なったな警察官.......」


亮⼆

「よく分かったな?」


泰良

「あんな強かったらすぐわかるよ。俺の事捕まえに来たんだろ?」


秀太

「そんな!?や、やだよ俺親⽗とやっと会えたのに!お、親⽗早く逃げようよ!」


桜義

「君が秀太くんで間違いないね?」


亮⼆

「⾔わなくてもそうだろう。」


泰良

「はぁ.......もう逃げる体⼒もねぇよ警察、好きにしろその代わりこの⼦だけ逃がしてくれねぇか。」


秀太

「やだよ!親⽗!俺も⾏くよ!そんな事⾔うなよ!」


泰良

「秀太!⽬をさませ!お前はお前の⼈⽣があるまだ若い!俺と同じ道を⾏くな!」


秀太

「やだよ俺は親⽗と⼀緒に居るんだよ!ずっと.......!」


パチンッ!思いっきりビンタをされる。


秀太

「え?.......」


泰良

「いいかよく聞け俺は殺⼈も犯した指名⼿配犯なんだよ。

お前は俺と⼀緒にいちゃいけねぇんだ.......早く⾏け!クソガキ!」


秀太

「お、おやじ.......そんな…。」


亮⼆

「あのーー取り込み中悪ぃんだけどさ…」


桜義

「亮⼆さん?」


亮⼆

「お前らめんどくせぇもう帰れ。」


泰良

「は?」


桜義

「は?」


加藤

「は?」


秀太

「は?」


亮⼆

「いや、だから帰れ。」


泰良

「いいのか、警察官?.......」


亮⼆

「俺はなぁ真実を知りたかっただけだ。

蜘蛛、いや泰良。お前は因縁のこの暴⼒団を壊滅させたかったんだろ?」


泰良

「あ、あぁ。」


亮⼆

「じゃあいいわ!指名⼿配犯:蜘蛛はこの抗争で死んだ。そういうことだ。」


桜義

「亮⼆さん!?」


亮⼆

「⾒たろ2人の絆?何が法律か、じゃねぇんだよ何が正しいかじゃねぇか?いいかこの俺、亮二が正義だ。」


桜義

「え、えぇ。」



亮⼆

「そういう事だ。俺の機嫌が変わらんうちに帰れ。」


桜義

「だそうだ。亮⼆さんがおっしゃっている。勇気ある⺠間⼈、秀太くん、そして蜘蛛いや、泰良今すぐ帰りたまえ、この後警察の応援隊が押し寄せる。逃げるなら今だ。」


亮⼆

「あ、そうそう泰良!その代わりこの事件俺と桜義で暴⼒団壊滅させたシナリオにしとくな〜

俺たちが来た時には蜘蛛は死んでたってことで!」


泰良

「⼿柄はその変わりよこせってか好きにしろ.......」


加藤

「えへへ。俺勇気ある⺠間⼈だってさ。」


秀太

「今?.......」


亮⼆

「んじゃあな。泰良!真っ当に⽣きろよ!第2の⼈⽣をよ…….守るべきものがそこにあるんだろ。」


泰良

「あぁ.......世話なったな警察。」


亮二

「亮二だ。」


泰良

「あぁ。恩に着るよ、亮二。」


桜義

「良かったんですか亮二さん。上層部には蜘蛛を逮捕するように命じられてたのに。」


亮二

「あぁ良いんだ。ズッコケ亮二と桜義の二人組は怒られるのに慣れてるだろ?」


桜義

「毎回怒られるのは亮二さんのせいですけどね。」


亮二

「まぁ今日から暴力団をたった二人で壊滅させたヒーロー亮二と桜義の誕生だけどな。」


桜義

「亮二さんそんな脚本力ありましたっけ?…」



亮二

「桜義新しい任務を命じる。俺の脚本をディレクション…」


桜義

「絶対嫌です。」



【場面変わり】


加藤

「いやぁ〜びっくりしたなぁ、短期間で⾊々ありすぎだって。」


秀太

「そうだよね。加藤さんがまさか相⼿のボスにトドメ刺すなんて驚いたよ!」


泰良

「加藤パァンチ!ってなwww」


加藤

「おぉ!やめろやぁい!」


秀太、泰良

「ははははははははははw」


.......

泰良【ナレーション】

荒波に揉まれて何のために⽣きているか分からなかった。


負の渦に巻き込まれ⾜掻き続けた。


⽣きるのに必死だった。


⼀筋の光が⾒えたその光を求めてただもがいた。

渦巻く荒波の⾏先そこには秀太お前がいたんだ。


こんなクズのどうしょうもねぇ、救いようのない俺でもやり直せるのだろうか。

罪はつぐなえるのか分からない。

この先も渦巻く荒波は何度も起きて俺を襲うかもしれない。


けどこれからは怖くない、どこへだって⾏ける気がする。

これからも何度だって⾜掻いてやるさ、光はここにあるんだから。


END


【キーワード】7人・男6・女1・痔・エンド

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